2024年05月21日

仮想通貨/暗号資産

仮想通貨の確定申告に必要な書類と準備方法を解説

この記事の監修者

村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

仮想通貨取引が普及するにつれて、確定申告の重要性が高まっています。仮想通貨取引で利益を得た場合、所得税及び住民税の対象となるため、適切に申告を行う必要があります。しかし、仮想通貨の確定申告に必要な書類やその準備方法については、わからないと思う方もいらっしゃるかもしれません。

 

本記事では、仮想通貨の確定申告に必要な書類とその準備方法について詳しく解説します。取引所から発行される取引履歴などの報告書や、自分で準備する必要がある書類について説明し、それらの入手方法や管理方法についても触れます。また、確定申告の期限と注意点についても解説します。

 

仮想通貨の損益計算に必要な書類

仮想通貨の確定申告をするためには、まずは仮想通貨の損益計算を実施する必要があります。

 

仮想通貨の損益計算に必要な書類は、大きく分けて2種類あります。取引所から発行される報告書と、自分で準備する必要がある書類です。

 

取引所から発行される報告書

  • 取引履歴:各取引に関する取引履歴の詳細が記載された報告書
  • 年間取引報告書:年間の取引状況をまとめた報告書

 

これらの報告書は、仮想通貨の損益計算を実施する際に必要となります。

ただし、年間取引報告書はすべての仮想通貨取引所が対応しているわけではなく、出力に対応していない取引所もあるので留意が必要です。

 

取引所から発行されない書類

Metamaskなど自身で作成したウォレットの取引:自分で作成したウォレットに関しては、そのウォレットアドレスに紐づくトランザクションを出力しなければなりません。

分散型取引所(DEX)の取引履歴:PancakeswapやUniswapなどの分散型取引所(DEX)についての取引履歴は、自身で出力しなければなりません。

STEPNなどのオフチェーンの取引:ブロックチェーンゲームをプレイされている方は、オフチェーンの取引(ブロックチェーン台帳に記載されない取引)の取引履歴が必要です。

 

これらの仮想通貨取引所以外の取引に関しても、損益計算の対象になりますので、損益計算のために取引履歴を出力する方法を模索しておかなければなりません。

 

年末時点でのポジション(枚数)のわかる資料

  • 仮想通貨取引所での年末のポジションのわかる資料
  • ウォレットに入っている資産の年末のポジションのわかる資料

これらは、損益計算のために必要となる資料です。

損益計算を実施する上で、計算上のコインの枚数が算定されます。計算がすべて正しく行われているのであれば、計算上のコインの枚数と実際に保有しているコインの枚数が一致します。

 

ですが、仮想通貨の取引においては、エアドロやステーキングなど取引の種類が多く、取引が漏れてしまうことが発生します。そのため、計算上の枚数と実際に保有している枚数とを比較することで、損益計算が正しく行われているかどうかを再確認する必要があります。

 

損益計算のやり方

仮想通貨の損益計算は非常に複雑で手間がかかります。

損益計算を実施するためには、下記のツールを検討されては良いかと思います。

国税庁が公表している仮想通貨の計算エクセル

国税庁は仮想通貨(暗号資産)の計算のためのエクセル資料を公表しています。

こちらからダウンロードが可能です。

 

ただし、この計算エクセルは複雑な計算には対応できていません。

仮想通貨の取引所間の移動や、ステーキング、レンディングなど細かい取引に対応していない面があります。

国内取引所のみを利用しており、仮想通貨を日本円で購入し、日本円で売却するのみといった、非常に単純な運用をされている方はこの国税庁のエクセル資料にて計算が可能となります。

 

エクセル、スプレッドシート

エクセルやスプレッドシートのような表計算ソフトも仮想通貨の損益計算のためには欠かせません。表計算ソフトを活用すれば、多くの取引履歴を集約することができますし、数式を活用することで計算もしやすくなります。

 

ただ一方、仮想通貨の損益計算のためには、仮想通貨の時価を集計してくる必要があります。これは仮想通貨から仮想通貨への交換は、税金の計算上は時価で売却とみなされるため交換時の仮想通貨の時価を集計する必要があります。

さらに、計算対象となる取引履歴も、仮想通貨取引所によって取引履歴のフォーマットが異なっていることから、複数の仮想通貨取引所を利用しているのであれば、エクセルやスプレッドシートでの計算は難しいかもしれません。

 

損益計算ツール

仮想通貨の損益計算のためのツールもあります。

 

  • クリプタクト
  • G-tax
  • クリプトリンク

など

 

これらのツールは有料で費用が掛かるものの、損益計算のために特化したツールであり、また複数の取引所にも対応していたり、一部のDeFiにも対応しているので、利用する価値はあると考えます。

 

専門家に依頼

仮想通貨を専門としている税理士や、仮想通貨の損益計算を専門としている専門家も存在します。

専門家に損益計算を依頼することで、費用は最も高くつくのですが、その分手間を少なく進めることができます。

 

さらに、税理士に損益計算を依頼するのであれば、損益計算のみならず、節税のアドバイスなども受けることが可能となっており、費用は高いものの付加価値の高い業務となります。

 

確定申告の必要書類

上記の損益計算が完了後に、確定申告を進めていくこととなります。

確定申告の必要書類は、主に以下となっています。

 

仮想通貨の損益計算の結果がわかる資料

まず、仮想通貨投資の利益を原則、雑所得に記入する必要があります。

仮想通貨の利益ですが、雑所得に数値を入力するのみで、詳細な資料のを確定申告書に添付して送付する必要はありません。

 

ですが、資料は保管義務がありますので、仮想通貨の損益計算のために利用した資料などはしっかりと手元に保管しておきましょう。

給料の源泉徴収票

続いて、会社員であれば本業の給料の情報を確定申告書に記入する必要があるため、給料の源泉徴収票が必要です。

これは、例年1月くらいに会社の人事から送付されてくるかと思います。

この給料の源泉徴収票の情報を、給与所得として確定申告書に記入していきます。

 

その他の収入及び必要経費を集計したもの

さらに、会社員や仮想通貨以外の収入がある方については、その情報も確定申告書に記入していきます。

  • 事業所得がある方は、事業収入および必要経費の情報
  • 不動産所得がある方は、不動産収入および必要経費の情報
  • 株式投資をされている方は、証券会社からの年間取引報告書
  • FX投資をされている方は、年間取引報告書もしくは取引履歴

など、ご自身の1年間の収入に係る資料が必要です。

 

これらは、年間の収入額に関する情報であり、これらの情報の入力漏れをしてしまうと、脱税として指摘されかねません。しっかりと漏れなく集計して申告することが必要です。

所得控除に必要な資料

最後に、所得控除に必要な資料です。

これは、主に下記のような資料を指しています。

 

  • 国民健康保険、保険料の支払い通知書
  • 社会保険の支払い情報(給料の源泉徴収票に記載)
  • ふるさと納税などの寄付金の情報
  • 扶養控除の情報(給料の源泉徴収票に記載)

など

 

これらは所得控除として税金を減らす効果がある資料ですので、しっかりともれなく集計することで無駄な税金を逃れることができます。

 

まとめ

仮想通貨の確定申告のためには、まずは損益計算を実施しなければなりません。損益計算を実行後に、確定申告に必要な情報を収集する必要があります。

 

仮想通貨に関しては、確定申告書に取引履歴などの資料を添付する必要がなく、損益計算のために活用した資料はあくまでも手元に保管しておく義務があるのみです。

 

ですが、最悪の税務調査に備えて、しっかりと資料は7年間保管しておきましょう。

 

仮想通貨の確定申告は、適切に行うことが重要です。必要な書類を揃え、正しく申告することで、ペナルティを回避することができます。

 

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