仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年05月21日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨投資を行う上で、税金の問題は避けて通れません。利益が出れば確定申告を通じて税金を払う必要があります。しかし、仮想通貨の税金は雑所得の総合課税となっているために、株式投資などと比較すると税金が高くなりやすく、うまいこと対策して税金を下げたいという方も多いことでしょう。
その税金対策の一つとして注目されているのが、「年またぎ取引」です。年またぎ取引とは、12月31日から1月1日にかけて、戦略的に売買を行うことで、税負担を軽減するための取引手法です。今回は、この年またぎ取引について、メリットとデメリットを詳しく解説していきます。
年またぎ取引について理解するためには、まず仮想通貨の税金の基本を押さえておく必要があります。
仮想通貨の取引で発生する税金には、主に所得税と住民税の2種類があります。所得税の税率は5%~45%の累進課税となっています。一方、住民税は都道府県と市区町村に払う税金で、税率は概ね一律10%です。
仮想通貨の税金は、原則として確定申告によって納税します。確定申告は、毎年2月16日から3月15日までの間に、前年の1月1日から12月31日までの所得について行います。
仮想通貨の税金計算の基本は、以下の通りです。
これらの情報を基に、次の計算式で利益または損失を算出します。
利益(または損失)= 売却価額 – 取得価額 – 必要経費
ここで注意が必要なのは、税金の計算対象期間は1月1日から12月31日までであるということです。つまり、年をまたいで取引を行った場合、税金の計算が一度リセットされてしまう可能性があるのです。
年またぎ取引の最大のメリットは、利益と損失を相殺して節税ができることです。
例えば、12月に100万円の利益が出た一方で、1月に100万円の損失が出たとします。この場合、12月の利益に対しては税金が発生します。また、1月の損失は1月以降の利益と相殺されることとなります。そのため、年またぎで取引をしてしまうと、12月の利益に税金がかかることとなります。
これを年またぎしないように12月に100万円の利益と100万円の損失を計上した場合はどうでしょうか?これは同一年度に100万円の利益と100万円の損失が計上されるために、利益が相殺されゼロになり、税金が発生しなくなるのです。
このように、同一の年度内に利益と損失を計上することで、相殺し、利益を減らすことで節税をすることができるのが、年またぎの重要なポイントです。
また、年またぎ取引のメリットのもう一つは、所得税の累進課税を避けることができる点です。
上述の通り、所得税は5%~45%までの累進課税となっております。これは、利益が多ければ多いほど高い税率が適用される、という仕組みになっております。
例えば含み益のある仮想通貨を保有しているとして、その仮想通貨を1年で全部売却するのではなく、年またぎで複数年にわたって売却することで、利益を複数年で分割して認識することができるので、高い累進課税を避けることができるのです。
年またぎ取引にはメリットがある一方で、デメリットもあります。
まず、価格変動リスクがあります。仮想通貨の価格は変動が大きいため、年またぎで取引をした場合、その数日間の間で価格が暴落してしまう可能性があり、結果として想定していた利益や損失が出ない可能性があります。
また、年またぎ取引を行うために、本来売買したいタイミングを逸してしまう可能性もあります。利益を最大化するためには、適切なタイミングで売買することが重要ですが、年またぎ取引に固執するあまり、そのタイミングを逃してしまうことがあるのです。
さらに、税制改正のリスクもあります。仮想通貨の税制は変更される可能性があるため、年またぎ取引を前提とした税金対策が、将来的に意味を成さなくなるかもしれません。
加えて、年またぎ取引を行うことで、税金計算が複雑になるケースもあります。特に、複数の取引所を利用している場合や、多数の銘柄を売買している場合は、計算が煩雑になる可能性が高いです。
年またぎ取引を実践するためには、以下のようなポイントを押さえておく必要があります。
まず、現在の仮想通貨のポジションやポートフォリオを年内に分析する必要があります。
仮想通貨投資はやっているものの、保有しているどのコインでどの程度の含み損益を抱えているかがわからないという例はきわめて多いです。
普段から、ポートフォリオ管理ツールを活用してコインの含み損益を把握しておかなければ、この年またぎ取引による節税テクニックは実践できません。
まずは、年内の取引履歴を分析し、年末でのコインの損切りなどの年またぎテクニックができるようにポートフォリオを管理しておくことを習慣づけておくことが大事です。
年またぎ取引を行う際は、以下の点に注意が必要です。
まず、税制改正の動向をチェックすることが重要です。仮想通貨の税制は変わりやすいので、常に最新の情報を入手し、税金対策を見直す必要があります。
また、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。仮想通貨の税金は複雑であるため、専門家のアドバイスを受けることで、適切な税金対策を行うことができます。
年またぎ取引は、仮想通貨投資における税金対策の選択肢の一つです。利益と損失を相殺して節税ができることや、所得税の累進課税を避けられることがメリットとして挙げられます。
その一方で、価格変動リスクや取引タイミングを逸するリスク、税制改正のリスクなど、デメリットもあることを理解しておく必要があります。
年またぎ取引を実践する際は、常に仮想通貨のポートフォリオを管理する癖をつけておきましょう。年内に損切りを素早く実行するためにも、今保有しているコインの取得価額、含み損益をある程度把握する必要があります。
仮想通貨投資において、税金対策は重要な課題ですが、年またぎ取引はその選択肢の一つに過ぎません。自身の投資方針や税務知識に合わせて、適切な税金対策を行うことが求められます。
税金の問題で悩んだら、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、適切な税金対策を行い、仮想通貨投資を有利に進めることができるでしょう。
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