2025年07月28日

仮想通貨/暗号資産

【2025年6月】金融庁が仮想通貨(暗号資産)の制度改革に着手!分離課税とETF導入は実現するのか?

この記事の監修者

村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

2025年6月、金融庁が仮想通貨(暗号資産)を巡る制度改革の検討を本格始動しました。
これは、仮想通貨にとって歴史的な一歩となります。
分離課税の導入や暗号資産ETFの登場に向けた“ステップ1”がついに動き出しました。

本記事では、金融庁が公開したディスカッションペーパーの内容と、そこから読み取れる今後の方向性、そして私たち投資家にとってのメリット・デメリットを分かりやすく整理します。

金融庁が公表した「暗号資産の制度のあり方」

2025年6月25日、金融庁が以下の報告書を公表しました。

暗号資産を巡る制度のあり方に関する検討について
~ 暗号資産制度に関するワーキンググループ(仮称)の設置 について~

これは、仮想通貨(法律上は「暗号資産」と呼びます)を“金融商品”として区分変更するための議論を始めるという公式な表明です。

現状は、仮想通貨は、資金決済法に定める決済手段、として位置づけられています。

金融庁は、仮想通貨を金融商品として区分変更するべく、上記の報告書を提出し、検討を開始し始めたこととなります。

このステップを踏むことで、将来的には以下の2点が実現する可能性があります。

  • 仮想通貨の分離課税の導入(税率20.315%固定&損失繰越)

  • ビットコインETFなどの暗号資産ETFが日本でも投資可能に

仮想通貨市場の現状

当該報告書では、仮想通貨がすでに日本国内で広く普及していることを以下のデータで示しています。

  • 日本国内の仮想通貨取引口座数は 1,214万口座(2025年時点)

  • 投資経験者の 7.3% が仮想通貨を保有

  • ネット証券利用者に限れば 10.2% が保有

  • 機関投資家の 62% が分散投資手段として関心あり

さらに、米国では暗号資産ETF(ビットコインETF・イーサリアムETFなど)が既に上場されており、米国の機関投資家等は暗号資産ETFに投資しています。
この暗号資産ETFは日本においては解禁されておらず、日本でも同様の導入を望む声が高まっています。

市場が盛り上がるものの、「詐欺リスク」は依然として深刻

一方で、仮想通貨業界には依然として大きなリスクがあります。
特に注目すべきは、詐欺に関する相談件数です。

  • 金融庁への相談件数:月平均300件

つまり、1日あたり約10件の詐欺被害報告が金融庁に報告されているのです。

金融庁は、「仮想通貨の普及=金融商品化」を進めたい一方で、詐欺リスクが多すぎる現状では投資家保護が追いつかないというジレンマを抱えています。

金融商品化に伴う「制度改革」のポイント

金融庁は制度改革の方向性として、以下の点を重視しています。

情報開示の充実

仮想通貨プロジェクトの健全性を担保し、投資家を保護するため、株式同様の情報開示ルールの導入をするべき

無登録業者への対応強化

日本の金融庁に登録していない、海外の仮想通貨取引所が日本人向けに営業することは違法となっています。このルールの明確化と取り締まり強化をするべき

投資勧誘セミナーの監視

無許可のオンラインサロンやセミナーによる詐欺的勧誘を厳しく規制するべき

価格の公正性とインサイダー対策

価格操作・インサイダーリスクへの監視体制を強化するべき

将来に向けた「3つのステップ」

今後の仮想通貨の税制改正・金融商品化には以下のステップが必要と考えています。

ステップ

内容

現状

① 金融商品に分類

仮想通貨を法的に「金融商品」と区分変更

検討開始(2025年6月現在ここ)

② 分離課税の導入

仮想通貨の利益に約20%の一律課税&損失繰越

将来的に期待

③ ETF導入

BTC・ETHなどの暗号資産ETFの日本での取り扱い

将来的に期待

分離課税の「メリット」と「デメリット」

今後、仮想通貨が金融商品として分離課税の対象になることにより、想定されるメリットとデメリットは下記の通りです。

(下記のメリットデメリットは、村上個人の予想を含んでおります。実際には予想と異なる変更が行われる可能性があることをご了承ください)

メリット

  • 税率が最大55% → 20%(固定)へ

  • ETF投資によって機関投資家・長期投資層の参入が期待

  • 投資商品としての信頼性向上

デメリット

  • 出国税が課される可能性が高くなる(※株式と同様に)

  • 損益計算がさらに複雑になる(海外の仮想通貨取引所は総合課税のため、計算が複雑に)

  • 規制強化により海外の仮想通貨取引所の利用の制限がされる可能性がある

  • 国内の仮想通貨取引所に対する金融庁のチェックが強化される

ステイ(変わらない可能性が高い点)

  • 海外の仮想通貨取引所は引き続き総合課税の対象

  • 仮想通貨同士の交換は非課税とならない見通し

ウォレット課税は「不明」だが要注意

個人管理型ウォレット(メタマスクなど)の課税方法はまだ明示されていませんが、技術的な難しさ(損益計算・チェーン分析の困難さ)から分離課税の対象外、つまり現状と変わらず総合課税となる可能性があります。

ここについては、金融庁や国税庁の今後の発表を待ちましょう。

まとめ

項目

内容

金融庁が制度改革に向けた検討を開始

仮想通貨を金融商品と位置付ける議論が始まった

分離課税&ETF導入が視野に

税率低下と投資の選択肢拡大に期待

出国税や損益計算の複雑化も

投資家にとって新たな負担も発生する可能性あり

今後の税制改正の行方に注目

実現時期や適用範囲はまだ不明だが、注視が必要

仮想通貨に関する制度は今後、税制・投資環境の大転換期を迎えようとしています。
今のうちから情報をキャッチアップして、制度変更に備えておくことが重要です。

 

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