仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年12月14日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
海外の仮想通貨取引所(BybitやMEXCなど)を利用していて、いざ確定申告をしようとしたら「一定期間以上の過去の取引履歴がダウンロードできない」「取引所が閉鎖してしまった」と焦ったことはありませんか?
実はこれ、仮想通貨投資家にとって非常に危険な状態です。
履歴がないからといって、適当に申告したり、無申告で済ませようとすると、最悪の場合、利益以上の税金を請求される可能性があります。
目次
まず、日本の税法のルールを知っておく必要があります。
「損益計算の立証責任は、納税者にある」
つまり、「私はこれだけ利益が出ました(あるいは損しました)」と証明するのは、あなた自身の責任なのです。もし、いくらで買ったか(取得費)を証明できなければ、税務署はこう判断します。
「取得費が不明なら、取得費は0円とみなします」
例えば、以下のケースで考えてみましょう。
通常であれば、この利益200万円に対して課税されます。
しかし、履歴がなく「800万円で買った証拠」が出せない場合、税務署は「売却額1,000万円すべてが利益」とみなす可能性があります。
なんと、手元の利益は200万円なのに、税金で300万円持っていかれる(実質税率150%)という事態になりかねないのです。
これを回避するために必要なのが、これから紹介する「推計計算」です。
取引所の閉鎖、アカウントBAN、ログ保存期間切れなどで履歴が出せない場合、実務的には以下の3つの方法でロジカルに数字を導き出し、税務署に納得していただいた上で計算を進めていくこととなります。
Etherscan(イーサスキャン)やSolscan(ソルスキャン)などのブロックチェーンエクスプローラーを使って履歴を追う方法です。
これが最も実務的で一般的な方法です。海外の仮想通貨取引所への送金元(入り口)と、着金先(出口)の記録から計算します。
「いくら日本円を投入して(入り口)、最終的にいくら日本円が戻ってきたか(出口)」という現金の動きをベースに、間の損益を推計し、ロジカルに説明します。
地味ですが、確実な証拠になるのがメールです。
Gmailなどで「Bybit」「MEXC」「Buy」「Sell」「ETH」などのキーワードで検索をかけます。
税務署に対して「記憶ではこれくらいでした」という主張は通用しません。
税務署は、納税者(投資家)の主張のみでは納得せず、主張を裏付けする証拠が必要です。
大事なのは「第三者が見てもわかる客観的な証拠」です。
これらを組み合わせ、「なぜその取得費になるのか」を合理的に説明できれば、履歴そのものがなくても認めてもらえる可能性が高まります。
海外取引所の履歴が消えてしまったからといって、適当に申告するのは脱税とみなされるリスクがあり非常に危険です。
この3つの「推計計算」を駆使して、客観的な証拠を積み上げましょう。もし、自分ひとりでは計算不能で「どうしようもない」という状態であれば、仮想通貨に強い税理士などのプロに相談することをおすすめします。
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