仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年05月14日
NFT
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
近年、NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)の人気が高まる中、NFTエアドロップという言葉をよく耳にするようになりました。NFTエアドロップは、NFTプロジェクトや企業が、特定の条件を満たしたユーザーにNFTを無料で配布する手法です。しかし、このNFTエアドロップには税金の問題が付きまとうことをご存知でしょうか?本記事では、NFTエアドロップと税金の関係について詳しく解説していきます。
目次
NFTエアドロップは、NFTプロジェクトや企業が、ユーザーにNFTを無料で配布する手法です。エアドロップの目的は、プロジェクトの認知度向上、ユーザーの獲得、コミュニティの活性化などが挙げられます。エアドロップを受け取るには、通常、特定の条件(SNSのフォロー、Discordサーバーへの参加など)を満たす必要があります。
NFTエアドロップの事例としては、CryptoPunksの創設者が行ったエアドロップが有名です。CryptoPunksは、イーサリアムブロックチェーン上で発行された1万体のユニークなキャラクターNFTです。創設者は、プロジェクト立ち上げ時に、Discordサーバーに参加していたユーザーに無料でCryptoPunksを配布しました。現在、CryptoPunksは高値で取引されており、エアドロップを受け取ったユーザーは大きな利益を得ています。
NFTエアドロップで受け取ったNFTは、税金の対象となります。これは、NFTが経済的価値を持つ資産であり、受け取った時点で所得が発生するためです。日本の所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基にして所得金額を計算する、という原則があり、その原則に従うと、経済的価値のあるNFT、つまり時価のついているNFTを受け取った場合は、確定申告が必要と考えます。
日本の場合、NFTエアドロップで受け取ったNFTは、一時所得もしくは雑所得として計上することとなります。一時所得とは、臨時的または予期しない所得のことを指します。一時所得の税額は、所得金額から50万円を控除した後、残りの金額の1/2に税率をかけて計算します。雑所得は、仮想通貨取引と同様で、収入金額から必要経費を控除した金額を所得として認識することとなります。
NFTエアドロップで受け取ったNFTの税金を計算するためには、以下の情報が必要です。
これらの情報を基に、エアドロップ時の利益を計算することとなります。
実際には、NFTはMetamaskなどのウォレットアプリを通じて購入していることが多く、イーサリアムチェーンやポリゴンチェーン、Solanaチェーンなどで購入していることが多いことから、ブロックチェーンエクスプローラーやDebankなどのウォレット分析サイトを通じて、上記の情報を収集することとなります。
例:
・エアドロップで受け取ったNFTの時価相当額:100万円
・一時所得の金額:100万円 – 50万円 = 50万円
・税額:50万円 × 1/2 × 所得税率(例:20%)= 5万円
例:
・エアドロップで受け取ったNFTの時価相当額:100万円
・税額:100万円 × 所得税率(例:20%)= 20万円
NFTエアドロップに関する税金の注意点として、以下の点が挙げられます。
NFTエアドロップで受け取ったNFTは、必ず申告する必要があります。温チェーン上で購入したNFTの購入に関するトランザクションはブロックチェーンエクスプローラーに記録され、半永久的に保存されることとなります。税務署もブロックチェーンエクスプローラーを見ることができるため、脱税しているかどうかの情報がバレてしまいます。
エアドロップで受け取ったNFTを売却した場合、売却益に対して税金がかかります。売却益は、売却価格からNFTのエアドロップ時の時価相当額を差し引いて計算します。
例:2023年に時価相当額30万円相当のNFTをエアドロップで獲得し、そのNFTを2024年に2ETH(売却時のETH=20万円)で売却した場合(NFTエアドロップは雑所得で計上)
回答:2023年にNFTエアドロップとして30万円の雑所得を認識
2024年にNFTの売却益として10万円(売却額40万円-エアドロップ時の価額30万円)を雑所得として認識
NFTのエアドロップ収入を雑所得に計上するか、一時所得に計上するかという点についてですが、投資家の性質による面があります。
一時所得は、国税庁の説明にある通り、下記の性質があります。
一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。
(引用元:国税庁No.1490一時所得)
雑所得は国税庁の説明にある通り、下記の性質があります。
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
(引用元:国税庁No.1500雑所得)
上記を勘案すると、営利を目的とする継続的行為から生じた行為であれば雑所得として認識し、そうでないのであれば一時所得として認識するのが良いでしょう。
NFTのエアドロップで利益を稼いでいる投資家は、多くのエアドロップのプロジェクトに参加している面があるために、雑所得として認識するケースが多いと考えます。
よくある質問として、「NFTをエアドロップで得たものの、そのあと急激に時価が上がりました。確定申告は必要でしょうか?」という質問を受けます。NFTのエアドロップですが、あくまでも「受け取った時点」で判断するために、受け取った時点での時価相当額が重要となります。受け取った時点では時価がついてない状態であり、そのあとに時価が上昇したのであれば、その場合は受け取った時点では確定申告は不要となります。
上述の通り、NFTエアドロップと税金の関係は複雑であるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。また、仮想通貨やブロックチェーン、NFTについては税理士の中でも専門的な知識が求められる面があるために、その領域の専門性に長けた税理士に依頼することをお勧めします。
本記事では、NFTエアドロップと税金の関係について詳しく解説しました。NFTエアドロップは、ユーザーにとって魅力的な機会ですが、税金の問題を無視することはできません。NFTエアドロップで受け取ったNFTは、適切に申告し、税金を納める必要があります。
今後、NFTエアドロップはますます盛んになると予想されます。それに伴い、各国の税制もNFTエアドロップに対応したものへと変化していくでしょう。NFTエアドロップを受け取る際は、税金の問題を念頭に置き、適切な対応を取ることが重要です。
NFTエアドロップと税金に関する情報は、今後も変化していく可能性があります。最新の情報を入手し、専門家のアドバイスを参考にしながら、NFTエアドロップに臨むことをおすすめします。
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