仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年09月10日
NFT
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
近年、NFT(Non Fungible Token:非代替性トークン)の人気が急速に高まっています。デジタルアートやコレクティブルなどの分野で注目を集め、市場規模は拡大の一途をたどっています。しかし、NFTの購入に際しては、税金の問題を考慮する必要があります。このブログでは、NFT購入時の税金について、基本的な知識から最新の動向まで詳しく解説していきます。
目次
NFTは、ブロックチェーン技術を用いて、デジタルデータに唯一無二の価値を付与したものです。それぞれのNFTには固有のIDが割り当てられ、他のデータと区別されます。これにより、デジタルデータの所有権や真贋性を証明することができます。
NFTは、デジタルアートをはじめ、音楽、動画、ゲームアイテムなど、さまざまな分野で活用されています。例えば、著名アーティストのデジタルアート作品がNFTとして販売され、高値で取引されるケースも出てきています。
NFTは、税法上どのように扱われるのでしょうか。
国税庁は、「NFTに関する税務上の取扱いについて(情報)」を開示しており、こちらも参照にしつつ、NFTのケース別の税金について解説します。
日本円でNFTを購入した場合は税金は発生しません。NFTは資産として扱われるため、通常の資産の購入となるため、ここで税金は発生しないこととなります。
仮想通貨でNFTを購入した場合ですが、仮想通貨の決済として扱われるため、仮想通貨の含み益相当が課税対象の利益として認識されます。そのため、含み益を抱えているコインでNFTを購入した場合は、税金が発生します。
例えばですが、過去に1ETHを10万円で購入し、その1ETHが40万円になったタイミングでNFTを購入した場合、NFTの購入価額は40万円となり、仮想通貨の決済にかかる利益として30万円(40万円-10万円)を認識し、利益として申告する必要があります。
NFTを売却して利益が出た場合は、税金が発生します。
例えばですが、1ETH(購入時1ETH=30万円)で購入したNFTを1.5ETH(売却時1ETH=40万円)で売却した場合ですが、売却価額は1.5ETH×40万円=60万円であり、購入価額は30万円となりますので、30万円(売却価額60万円-購入価額30万円)の利益を認識することとなります。
NFTを購入後、保有しているNFTが値上がりした場合はどうでしょうか?
NFTはOpenseaやMagicEdenといったマーケットプレイスを通じて売買が行われています。もともとは安い価格で購入したものの、気づけば何十万円という価格で流通している場合、NFTの価値が値上がりした状態となります。
この場合であったとしても、税金はかかりません。NFTが値上がりした場合はあくまでも保有資産の価値が向上しただけの状態のため、税金はかからないこととなります。
ブロックチェーンゲームをプレイすることにより、特定のNFTを獲得した場合ですが、この場合は税金が発生することとなります。
所得税法上、経済的価値のあるものを取得した場合には、その取得時点における時価を基に して所得金額を計算します。
(国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」より)
上述の通り、ブロックチェーンゲームをプレイしたことによって、経済的価値のあるNFTを獲得した場合は、獲得時点におけるNFTの時価を基に課税対象となる利益を認識することとなります。
エアドロップとは、キャンペーンの一種となります。エアドロップでNFTを獲得した場合においても、上記の⑤ブロックチェーンゲーム内でNFTを獲得したケースと同様に、利益を認識します。
NFTクリエイターがNFTを販売することによって得た収入ですが、これは課税対象の利益として計算することとなります。
NFTは通常、仮想通貨建てで販売されることとなりますので、売却時の仮想通貨の時価を乗じて収益を計算することとなります。
例えばですが、クリエイターが作成したNFTが0.5ETH(販売時の1ETH=40万円)で売却された場合、20万円(40万円×0.5ETH)を収益として認識します。
上述の通り、NFTによって得た収益は利益として認識しなければなりません。
この際、所得税法上のどの所得に区分されるかが気になるところでしょう。NFTの所得区分ですが、事業所得・譲渡所得・雑所得のいずれかに該当することとなります。
NFTの売買等を営利目的であり、継続して取引を行っており、社会通念上の概念(下記を参照)を満たす場合は事業所得として計上可能です。
会社員が副業でNFT売買をされている場合は、社会通念上の概念を満たすことが難しい場合が多いですが、NFTクリエイターを専業として活動している方であれば、事業所得計上が可能となります。
NFT売買を行っているものの、営利目的ではなく、継続して取引を行っていないのであれば、譲渡所得として計上が可能です。
NFTをそこまで頻繁に取引していないケースであれば、この譲渡所得に計上することができます。
NFTの売買等を営利目的で継続して取引を行っているものの、社会通念上の概念を満たしていない場合は雑所得として計上することとなります。
主に、会社員や経営者などの本業がありつつ、NFTの売買をしているケースは基本的に雑所得となります。
NFTを営利目的で継続的に取引を行っている場合は、事業所得もしくは雑所得として計上することができます。
この際の社会通念上の概念とは、下記の要件を指します。
(社会通念上の概念)
・営利性はあるか?
・有償性はあるか?
・反復、継続しているか?
・自己の危険と計算による企画遂行性はあるか?
・費やした労力の程度はどのくらいか?
・設備はあるか?
・どのような生活をしているか?副業か、他に仕事をしているか?
・社会的にはどのような地位にあるか?
・収益の状況はどうか?継続的、安定的に利益が出ているか?
こういった要件を満たしているのであれば、事業所得として計上可能で、要件を満たしていないのであれば雑所得として計上となります。
NFTに関する税制は、現在も議論が続いています。国内外で法整備の動きがあり、将来的な税制の方向性が注目されます。
日本では、2023年末において、NFTに関する税務上の取り扱いが明確化されました。それまではNFTの税金に関する指針がなく、NFTの税金上の扱いが不明であったものの、NFTを売買する人が増加したために指針が出たものと考えています。
また、RWA(リアルワールドアセット)といわれており、既存の商品とブロックチェーン技術を組み合わせる技術も進化しています。具体的にはホテルの宿泊券や不動産のNFTなどです。こういった技術はますます進化し、今後はさらにNFTが身近になるでしょう。
この記事では、NFT購入時の税金について解説してきました。NFTの購入自体には直接的な税金はかかりませんが、仮想通貨で購入した場合は、含み益に対して課税されます。
また、NFTに関する税制は、国内外で議論が続いています。今後の法整備の動向を注視しつつ、適切な税務対応を行っていく必要があります。
NFTの人気が高まる中、税金の問題は無視できません。NFTを購入する際には、税務の専門家に相談するなど、慎重に対応することをおすすめします。
NFTは、新しい価値の創出を可能にする革新的な技術です。税制面の整備が進むことで、より多くの人々がNFTの魅力を享受できるようになるでしょう。NFTの可能性に期待しつつ、適切な税務対応を心がけていきたいものです。
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