仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年05月21日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨投資が大きな注目を集める中、その利益に対する税金の取り扱いについて関心が高まっています。特に、利益が20万円以下の場合の確定申告の必要性については、多くの投資家が疑問を抱いているのではないでしょうか。本記事では、仮想通貨の税金に関する基本ルールから、20万円以下の利益の扱いまで、詳細に解説します。また、税金対策や注意点についても触れ、読者の皆様が適切に税務申告を行えるようサポートします。
仮想通貨の売却益やステーキング、レンディングなどの運用収入は、原則として、雑所得として扱われます。つまり、所得税と住民税の課税対象となるのです。ただし、一定の条件を満たすことで、事業所得として扱われる可能性があります。
雑所得の場合、所得税率は5%から45%になっており、利益が大きいほど高い税率が適用されます。一方、住民税率は所得に関わらず10%前後で一定です。したがって、仮想通貨の利益に対する税金は、合計で15%から55%程度になると言えるでしょう。
多くの投資家が関心を寄せているのが、20万円以下の仮想通貨利益の扱いです。
通常の会社員であれば、20万円以下の副業収入であれば確定申告が不要となっていることから、仮想通貨の利益が20万円以下であれば確定申告は不要となります。
ただし、以下の留意点があります。
【留意点】
留意①:年末調整を実施していない会社員であれば、利益が1円でも出ていれば確定申告が必要になること
これは、20万円以下の場合は確定申告が不要というのは、「年末調整を実施済みの会社員」のみに与えられた制度であることが理由です。
年収が2000万円を超えている、給与所得が2箇所以上から発生しているなどの状況であれば年末調整の対象外となっているため、年末調整を実施していない会社員であれば、仮想通貨の利益が20万円以下でも確定申告が必要になります。
留意②仮想通貨以外の副業の収入がある会社員は、仮想通貨と副業の利益を合算し、合計の利益金額が20万円を超えるかどうかの判定をしなければならないこと
例えばですが、副業としてWebマーケティングを実施しており、Webマーケティングの収入が15万円、仮想通貨の利益が10万円だった場合、合計の利益が25万円となり、確定申告が必要になります。
仮想通貨の利益が20万円以下であっても、仮想通貨以外の副業の収入を合算し、その合算金額が20万円を超えていれば確定申告が必要になるので留意が必要です。
留意③仮に20万円以下で確定申告が不要だったとしても住民税の申告は必要であること
20万円以下で確定申告が不要だったとしても、住民税の申告は別途必要になります。
通常、住民税の申告は、確定申告を通じて行われることとなります。つまり、確定申告を実施していれば、その情報が自動連係されるため、住民税の申告を別途実施する必要はありません。
20万円以下で確定申告が不要なのは、あくまでも確定申告のためのルールであり、住民税の申告において20万円以下は申告不要というルールはありません。
そのため、20万円以下で確定申告が不要だった場合は、別途住民税の申告が必要となります。住民税の申告は住んでいる地域の市町村に問い合わせをして進めるのが良いかと思います。
留意④毎年確定申告を実施していいる個人事業主(フリーランス)であれば、1円以上の仮想通貨の利益で申告が必要なこと
毎年確定申告を実施している個人事業主の場合は、20万円以下は不要というルールがないために、仮想通貨で1円でも利益が出れば雑所得にその利益を記載することとなります。
20万円以下の利益であるかどうかを判断するためには、正確に利益を計算しなければなりません。利益は、売却価格から取得価格を差し引いた金額になります。
例えば、10万円で購入した仮想通貨を、12万円で売却した場合、利益は2万円(12万円 – 10万円)になります。
ただし、売却や取得にかかった手数料などの経費は、利益から差し引くことができます。上の例で、売却時に手数料として1,000円かかった場合、利益は19,000円(2万円 – 1,000円)となります。
また、前述の通り、仮想通貨の売却で損失が発生した場合、その損失を他の仮想通貨の売却益や仮想通貨以外の他の雑所得と通算することができます。
例えば、A社の仮想通貨で3万円の利益が出た一方、B社の仮想通貨で2万円の損失が出た場合、通算後の利益は1万円(3万円 – 2万円)となります。この損益を合算することを活用し、税負担を軽減することが可能です。
ただし、仮想通貨での損益を合算するためには、損失が出た年と利益が出た年が同じであることが条件となります。
仮想通貨の確定申告が実施不要だとしても、なぜ確定申告が不要だったのかを説明できる資料を残しておくことが有用です。将来の税務調査に備えて、取引記録や計算根拠となる資料は、少なくとも7年間は保管しておく必要があります。取引所からのメールや報告書、取引画面のスクリーンショットなどを保存しておくと良いでしょう。
さらに、仮想通貨の税制は変更される可能性があるため、常に最新の情報を入手することが大切です。税制改正の動向は、国税庁のウェブサイトや、仮想通貨に関する専門メディアなどで確認できます。
加えて、税金計算の複雑さから、税理士に相談することをおすすめします。特に、利益が大きい場合や、他の所得との兼ね合いが複雑な場合は、専門家のサポートを受けることで、適切な申告が可能になります。
仮想通貨の利益が20万円以下の場合は、通常の会社員であれば原則として確定申告は不要です。しかし、他の副業収入と合算して20万円を超える場合や、年末調整を実施していない会社員の場合は、確定申告が必要になります。また、住民税については、20万円以下は申告不要というルールがないために、確定申告は不要でも別途住民税の申告は必要になるので留意しましょう。
利益の計算には、正確な取得価格と売却価格の把握が不可欠です。手数料などの経費も忘れずに計算に含めましょう。また、損失との通算も適切に行うことで、税負担を軽減することができます。
仮想通貨投資は、税務リスクにも注意が必要です。税制変更の可能性を念頭に置き、最新の情報を入手しながら、適切に税金を納めることが重要です。必要に応じて、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
仮想通貨投資を行う際は、利益の追求だけでなく、税務面での義務も怠らないようにしましょう。適切な申告を行うことで、安心して投資に取り組むことができます。本記事が、読者の皆様の仮想通貨投資と税務申告の一助となれば幸いです。
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