2025年07月4日

仮想通貨/暗号資産

仮想通貨を法人化するタイミングとは?税制の違い・メリット・デメリットを解説

この記事の監修者

村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

近年、仮想通貨投資が大きな注目を集める中、多くの投資家が税金問題に頭を悩ませています。特に、利益が出た場合の税負担を軽減するために、法人化による節税メリットに関心が高まっています。しかし、法人化にはメリットだけでなく、デメリットもあることを理解しておく必要があります。

本記事では、個人の仮想通貨投資に関する税制の概要を解説した上で、法人化のメリットとデメリットを詳しく比較します。さらに、法人化による節税効果の試算例を示し、法人化の手順と注意点についても触れます。本記事を通じて、読者の皆様が自身の投資スタイルや規模に合わせた賢明な選択を行えるようサポートします。

仮想通貨の税制は個人と法人で異なる

個人が仮想通貨投資で得た利益は、原則として「雑所得」として扱われます。雑所得の税率は、所得金額に応じて5%から45%に分かれており、他の所得と合算して総合課税の対象となります。さらに、住民税がおおよそ10%程度かかることとなります。結果として仮想通貨の税率は最大税率55%となっています。

仮想通貨投資で損失が出た場合、雑所得内での損益通算は可能ですが、給与所得など他の所得との損益通算はできません。また、損失の繰越控除は認められていません。そのために、仮想通貨の実質的な税率はさらに高いと言えるでしょう。

利益が出た場合は、確定申告が必要です。仮想通貨の売却価格から取得価格と経費を差し引いた金額を雑所得として申告します。取引所から発行される取引報告書などを活用し、正確な申告を心がけましょう。

一方、法人になると、その扱いが異なります。

法人の場合は、法人税の対象となります。法人税率ですが、おおむね25%~35%の税率となっているため、単純に税率のみを比較すると法人税率の方が有利となっています。

仮想通貨を法人化する最適なタイミング

では、仮想通貨で法人化するタイミングはいつでしょうか?

法人化することにより、メリットも享受できるものの、多くのデメリットが存在します。

おすすめのポイントとしては以下のような状況が挙げられます。

仮想通貨での利益が大きい

法人化によって、税率を下げることができるものの、法人は設立コストや維持コストなどの各種コストが高くつきやすいです。

そのため、安定して仮想通貨から利益が見込める状態であれば、仮想通貨での法人化を検討してみてもよいでしょう。

継続的な利益が見込める場合

法人化によって、毎年の維持コストが高くつきます。

さらに法人はやめようとしても、法人清算にコストがかかります。そのため、安定的に利益が見込める場合は、法人化が有効になるでしょう。

設備投資や外注費など仮想通貨での事業化を目指している

法人として活動することにより、社会的な信頼を得ることができます。

銀行からの融資や人材募集も進めることができますので、事業として進めていく場合には法人化が有効でしょう。

すでに含み益がある場合は法人化は有効ではない

なお、法人化の留意点ですが、すでに個人の仮想通貨にて含み益がある場合は、法人化は有効ではないこととなります。

法人として暗号資産を保有するには、法人名義の銀行口座の開設および法人名義の暗号資産取引所の開設が必要となっています。

現在、個人の名義の仮想通貨取引所での仮想通貨に含み益を抱えている場合は、その状態で法人を設立しても意味が薄くなります。

個人で保有している暗号資産を法人へ譲渡する必要があり、その際の譲渡価額が時価となるため、結果的に個人で多額の税金がかかることになるのです。

仮想通貨を法人化のメリット

仮想通貨投資で得た利益に対する税負担を軽減するために、法人化を検討する投資家が増えています。法人化には以下のようなメリットがあります。

法人税率

まず、法人税率が個人の税率よりも低いことが挙げられます。法人税率は、年間所得に応じて15%から23.2%の2段階に分かれています。実際には法人税のみならず、法人住民税や法人事業税等がかかりますが、全体の法人税等の税率はおおよそ25~35%程度でしょう。

個人の最高税率が55%であることを考えると、法人化による節税効果は大きいと言えるでしょう。

経費の範囲

法人化することで、経費の範囲が広がります。仮想通貨投資に関連する設備投資や人件費、交際費などの事業で活用している費用を経費として計上できるため、節税効果が高まります。

個人の場合は、経費の範囲が現医的となっています。具体的には取引手数料や仮想通貨投資のために利用したPCの代金、電気代などです。仮想通貨投資に直接関連するものだけが計上できることとなっていますが、法人の場合は、法人の事業に関するものが経費として計上可能になっているために、相対的に経費の範囲が広まることとなります。

損失の繰り越し

法人化すれば、損失の繰越控除が可能になります。事業年度内で損失が出た場合、その損失を翌年度以降に繰り越して、将来の利益と相殺することができます。これにより、中長期的な節税効果が期待できます。

法人の場合は、損失繰越が10年間認められているために、市況によっては赤字になりやすい仮想通貨投資と損失繰越の相性は非常に良いことでしょう。

その他のメリット

その他のメリットとして、福利厚生の充実や信用力の向上などが挙げられます。法人化により、従業員への福利厚生を拡充したり、取引先からの信頼を高めたりすることが可能です。

仮想通貨を法人化するデメリット

法人化による節税メリットは大きい一方で、デメリットについても理解しておく必要があります。

設立・維持コストがかかる

まず、法人の設立および維持にかかるコストが高いことが挙げられます。法人設立には登記費用や印鑑証明書の取得費用などがかかります。おおよそですが、株式会社だと30万円、合同会社だと10万円程度の設立コストがかかります。

また、毎年の税務申告や決算報告にも一定のコストが発生し、税理士等への報酬もかかることとなります。オフィスの賃料、電話回線などの代金もかかってくるでしょう。

時価評価の必要性

また、法人で仮想通貨を運用している場合、期末時点での時価評価が必要となります。

この時価評価は含み損益が法人税の対象となります。そのため、例えばビットコインを保有しているだけでも含み益が生じていれば法人税が発生してしまいます。

結果として、長期的に仮想通貨を保有する場合、含み損益が法人の利益もしくは損失としてカウントされるために、毎年の法人税が大きく増減する可能性があります。

事務処理の煩雑化

さらに、事務処理が煩雑になることも留意点です。法人化により、経理業務や税務処理が複雑化します。取引の記録や帳簿の管理、税務申告など、個人事業主の場合に比べて手間が増えることは避けられません。

社会保険の負担

また、法人化により、社会保険の負担が増加します。従業員を雇用する場合、健康保険や厚生年金保険などの社会保険料の事業主負担分が発生します。この負担は、法人の収益性に影響を与える可能性があります。

税務調査の可能性

さらに、法人化すると、税務調査を受ける可能性が高くなります。個人事業主と比べて、法人は税務調査の対象になりやすい傾向があります。適切な会計処理と税務申告を行うことが重要ですが、税務調査への備えも必要です。

銀行口座の開設

近年、マネーロンダリングなどの金融犯罪が多発していることから、法人設立後の銀行口座の開設が難しくなっています。

法人を設立する際は、銀行の審査項目にある、「事業実態のあるものかどうか?」を証明できるような資料を事前に準備しておくことが大事です。

まとめ

仮想通貨投資で得た利益に対する税負担を軽減するために、法人化を検討する投資家が増えています。法人化には、法人税率の低さや経費の範囲の広さ、損失の繰越控除などのメリットがある一方で、設立・維持コストの高さや事務処理の煩雑化、社会保険の負担増加などのデメリットもあります。

個人と法人の税制の違いを正しく理解し、自身の投資スタイルや規模に合わせて、適切な選択を行うことが重要です。法人化による節税効果は、投資規模や収益性によって異なるため、シミュレーションを行い、慎重に判断することをおすすめします。




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