仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年04月30日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
近年、仮想通貨取引が世界的に大きな注目を集めています。ビットコインをはじめとする仮想通貨は、その利便性と高い投資リターンの可能性から、多くの個人投資家が参入しています。しかし、仮想通貨取引に関しては利益が出ているのであれば、適切な申告と納税が求められます。仮想通貨の脱税は、税務署が注力して分析・調査している分野の一つです。そのため仮想通貨の税務調査の件数は年々増加傾向にあります。本記事では、仮想通貨取引における税務調査の実態と、それに備えるための対策について解説します。
目次
税務調査とは、一言で言えば、「確定申告書の答え合わせ」です。
税務調査は、税務当局が納税者の申告内容の正確性を確認するために行う調査です。主な目的は、申告漏れや過少申告の発見、脱税の防止などです。税務調査は通常、電話や手紙での事前の通知が行われた上で調査が行われます。任意調査となっているためです。
これに対し、査察と言われる税務調査よりも厳しい調査があります。査察は、事前の通知なしで査察官が突然家に押し寄せてくることとなります。査察の場合は、悪質な脱税をしている可能性が非常に高いこと、さらに査察官が事前にその脱税を調べていることが要件になっています。
税務調査の対象となる納税者は、無作為に選ばれるケースもありますが、一般的に、申告内容に不自然な点がある場合や、高額所得者、頻繁に海外取引を行う個人や法人などが選定されやすい傾向にあります。
仮想通貨取引に特化した税務調査は、近年増加傾向にあります。国税庁は、仮想通貨取引所への情報提供を求めるなど、仮想通貨取引の把握に力を入れています。税務当局が注目するポイントは、主に以下の点です。
【仮想通貨取引で税務署が注目しているポイント】
過去には、ADA(カルダノエイダ)の一斉調査が行われたケースもあります。
国税庁は毎年、所得税及び消費税調査等の状況という資料を提示しています。その資料においては、国税庁が注力して調査する項目が列挙されております。
仮想通貨取引は、インターネット等取引として国税庁が注力して調査している取引の一つとなっています。そのため、仮想通貨の所得が無申告もしくは実際よりも低い金額で申告している場合は、税務調査の対象になりやすいのです。
(参考:国税庁発表の「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」)
仮想通貨の税務調査は通常の税務調査と異なる面があります。取引履歴が多くなりやすく、また取引の分析が複雑になりやすいためです。
具体的には、以下のような特徴があります
仮想通貨の税務調査においては、通常の税務調査官のみならず、情報処理に長けた調査官が同行することがあります。情報技術専門官と言われるような情報処理に詳しい調査官です。仮想通貨の税務調査は取引履歴の分析などの高度な情報処理が求められる麺があるために、この専門の調査官が同行することがあるのです。
仮想通貨投資をされている方であれば、Google Authenticatorなどの2段階認証アプリを活用していることかと思います。この2段階認証を行うことで、投資家自身の大事な資産を保護することができるのです。
仮想通貨の税務調査では、この2段階認証アプリの提示が求められることが多いです。投資家が2段階認証アプリを使っているということは、2段階認証アプリを見れば投資家が利用している仮想通貨取引所を網羅的に検出することができるためです。
仮想通貨の税金は、投資家が利用している全ての仮想通貨取引所の取引履歴を分析して損益を算出する必要があります。そのため、一部の仮想通貨取引所を意図的に無申告にすることによる脱税を防ぐために、2段階認証アプリが見られることとなります。
仮想通貨の損益計算は非常に複雑になりやすく、取引数も多いために損益計算を実施しようとすると何日も時間がかかります。そのため、税務調査の際には、調査官が取引履歴をUSBなどで持ち帰ることが多いです。
では、税務署はどのようにして仮想通貨の脱税や無申告を探しているのでしょうか?主に以下の2点が大きな理由として挙げられます。
・仮想通貨取引所と銀行口座の間で頻繁に資金移動がある場合、税務当局に不審な取引として認識される可能性があります。
・税務当局は、金融機関から提供された口座情報をもとに、仮想通貨取引に関連する入出金を特定し、調査対象を絞り込むことができます。
・多額の入出金がある場合、税務当局から取引内容の説明を求められる可能性が高くなります。
・国内の仮想通貨取引所は、法律(資金決済法)に基づき、利用者の本人確認(KYC)を行う義務があります。
・ 取引所は、利用者の取引履歴や個人情報を保持しており、税務当局から情報提供を求められた場合、これらの情報を提供する必要があります。
・税務当局は、取引所から入手した情報をもとに、申告内容と実際の取引内容を照合し、申告漏れや過少申告を発見することができます。
さらに、国際的な税務情報交換の枠組みにより、海外の仮想通貨取引所を利用している場合でも、税務当局が取引情報を入手することが可能です。
以上のように、税務当局は様々な方法で仮想通貨取引に関する情報を収集しており、申告漏れや過少申告のリスクは高まっています。仮想通貨取引を行う個人や法人は、仮想通貨取引だから税務署にはバレないなどと思わず、しっかりと申告して納税することを心がけましょう。
仮想通貨取引を行う個人や法人は、税務調査に備えて、以下の点に留意する必要があります。
仮想通貨取引は、その利便性と投資機会から多くの人々を惹きつけていますが、税金については十分な注意が必要です。仮想通貨取引に特化した税務調査は増加傾向にあり、適切な申告と納税が求められています。
正確な取引記録の保持、専門家への相談、自主的な開示などを通じて、税務調査に備えることが重要です。仮想通貨取引を行う全ての個人・法人が、適切な税務処理を行い、健全な仮想通貨市場の発展に寄与することを願っています。
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