仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年05月7日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨投資は、近年急速に普及し、多くの個人投資家が参入しています。しかし、仮想通貨投資による所得の税務上の取り扱いについては、複雑であり専門的な知識が求められる面があります。仮想通貨投資は原則、雑所得として計上される、というのはよく知られている内容ですが、雑所得でも種類があるのをご存知でしょうか?具体的には、業務に係る雑所得とその他雑所得の2種類があります。本記事では、業務に係る雑所得についての解説とそのメリットについて説明していきます。
目次
個人で仮想通貨投資をされている場合は、税務上、事業所得・業務に係る雑所得・その他雑所得の3つに区分されます。
仮想通貨の所得区分については、国税庁発表の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」に記載してあります。
(以下、国税庁の上記HPより引用)
答 暗号資産取引により生じた利益は、所得税の課税対象になり、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
暗号資産取引により生じた損益は、 邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益と認められますので、原則として、雑所得(その他雑所得)に区分されます。
ただし、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超える場合には、次の所得に区
分されます。
・ 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がある場合・・・原則として、事業所得
・ 暗号資産取引に係る帳簿書類の保存がない場合・・・原則として、雑所得(業務に係る雑所得)
なお、 「暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合」、例えば、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として暗号資産を使用した場合は、事業所得に区分されます。
さらに、事業所得計上に関しては、「社会通念上の判断」が求められると国税庁は主張しています。
上記を勘案すると、仮想通貨投資の所得区分については、下記のように整理することができます。
収入金額が300万円以上、かつ帳簿保存があり、社会通念上の判断を満たしている→事業所得
収入金額が300万円以上である→業務に係る雑所得
それ以外→その他雑所得
まとめると、以下のようなイメージになります。
(村上作成)
業務に係る雑所得とは、事業所得や給与所得には該当しない業務から生じた所得を指します。副業に係る収入であり、営利目的で継続的に行われているものとなります。具体的には以下のようなものが該当します。
(業務にかかる雑所得の事例)
など
事業所得でない、かつ営利を目的として継続的に行われているものが、業務に係る雑所得となるため、仮想通貨投資においても、一定の要件を満たすことで業務に係る雑所得として計上可能となっています。
業務に係る雑所得には下記のメリットがあります。
業務に係る雑所得の一番大きなメリットは、その他雑所得に比べ、必要経費の範囲が広がることです。必要経費を計上することで節税をすることができます。その他雑所得だと、仮想通貨投資に「直接」関連のあるものしか経費として計上できないため、必要経費の範囲が狭いものの、業務に係る雑所得であれば、間接的にかかってくる費用も必要経費として計上することが可能になるために、節税をすることができます。
なお、仮想通貨投資の必要経費についての詳細は下記記事を参照ください。
また、業務に係る雑所得は、事業所得の要件に比べると要件が緩く設定されているのがメリットです。事業所得として計上するためには、年間の収入金額が300万円以上のみならず、帳簿保存や社会通念上の判断が求められます。
特に、社会通念上の判断は営利性・反復性・継続性など多くの面で検討が必要な項目となるため、複雑になっています。
仮想通貨投資を事業所得として計上するための要件やメリットは下記ブログを参照ください。
一方、業務に係る雑所得にはデメリットも存在します。
前々年の売上高が1000万円を超えているのであれば、収支報告書の提出が必要となります。
収支報告書とは、簡易的な損益計算書のようなものとなっています。これは、e-taxの確定申告書作成コーナーからも作成することができます。
現金預金取引等関係書類といわれる書類を保存する義務が生じます。
仮想通貨投資を業務に係る雑所得として計上するためには、仮想通貨取引に係る収入金額が年間300万円以上であることが要件となります。この要件を満たさない場合は、その他雑所得として申告する必要があります。
ここでいう収入金額とは利益とは別であり、1年間(1月1日〜12月31日まで)の売却額合計金額となっています。例えばですが、200万円で仮想通貨投資を行い、200万円でビットコインを購入し、200万円で売却。さらに100万円でイーサリアムを購入し100万円で売却した場合、利益はゼロですが、売却額合計は300万円以上となるために、業務に係る雑所得として計上する要件を満たしています。
仮想通貨投資による所得は、事業所得、業務に係る雑所得、その他雑所得の3つに区分されます。それぞれの区分には、適用される要件や税務上の取り扱いが異なるため、自身の状況に合わせて適切な申告を行うことが重要です。
業務に係る雑所得は、年間の収入金額が300万円以上であることが要件となっており、帳簿保存の義務や社会通念上の判断が求められないために、事業所得よりも要件が緩くなっています。
さらに、業務に係る雑所得として申告する場合、必要経費の範囲がその他雑所得よりも広がるというメリットがあります。必要経費の控除が可能になるため、節税効果を得ることができます。
仮想通貨投資を行う際は、税務上の取り扱いについて正しい知識を持ち、適切な申告を行うことが重要です。必要に応じて、税理士など専門家に相談することをおすすめします。
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