仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2026年09月10日
仮想通貨/暗号資産
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
この記事は、日本にお住まいで、個人で暗号資産(仮想通貨)の確定申告を準備している方向けです。根拠確認日は2026年9月9日で、提出書類の例には令和7年分(2025年分)の手引き・作成コーナーを使っています。令和8年分(2026年分)の様式はまだ確認していないので、申告する年分の手引きもあわせてご覧ください。
「仮想通貨の確定申告をしたいけれど、何を用意すればいいの?」
まず揃えるのは、取引履歴・経費の領収書・損益計算の結果の3つです。ただし、揃えた資料を全部税務署に出すわけではありません。出す書類は、所得の種類や受ける控除によって変わります。
「その他雑所得」として申告する場合、国税庁の「暗号資産の計算書」を申告書に添付する必要はありません。仮想通貨の所得については、取引履歴や年間取引報告書をもとに収入と経費を計算して、申告書に入力すれば足ります。控除などに応じて出す書類は別にあるので、後半の表で確認してください。計算に使った資料と結果は、あとで見返せるように残しておきましょう。国税庁・作成コーナー「暗号資産の取引に係る収入がある場合」
書類は「税務署に出すもの」「手元に残すもの」「税理士に渡すもの」の3つに分けると整理しやすいです。税理士に渡す資料と、税務署に出す書類は同じではありません。出さなくても、残しておかないと困る資料があります。
この記事では、出す書類と残す資料を順番に見ていきます。税理士への依頼を考えている方は、取引所・DeFi・NFTごとにまとめた税理士へのご依頼に必要な資料一覧もご覧ください。法人の申告はこの記事では扱いません。
目次
同じ書類を複数の用途で使うこともあります。取引所の年間取引報告書は、自分で計算するときの元データにもなりますし、依頼するときは税理士に渡す資料にもなります。
表が画面に収まらない場合は、横にスクロールしてご覧ください。
| 資料 | 主な用途 | どう扱うか |
|---|---|---|
| 確定申告書と、申告内容に応じた決算書・収支内訳書・控除の明細書等 | 申告時に提出/控えを保管/依頼時に共有 | 次の表で所得区分・申告内容を確認する |
| 年間取引報告書、売買・交換・入出金等の取引履歴 | 計算・説明のために保管/税理士へ共有 | 計算の元データとして残す |
| 手数料等の経費の根拠となる領収書・請求書 | 計算・説明のために保管/税理士へ共有 | どの支出を計算に使ったか分かるようにしておく |
| 損益計算ツールの結果、計算用Excel、前年からの繰越数量・取得価額の資料 | 計算・説明のために保管/税理士へ共有 | 申告額を再確認できるよう元データと一緒に残す |
| ウォレットアドレス、利用チェーン、取引メモ | 計算・説明のために保管/税理士へ共有 | 海外取引所やDeFiの履歴を補う情報として整理する |
「残す」には、法律で保存が決まっているものと、あとで計算に困らないように残しておきたいものの両方があります。何年残すかは後半の表で説明します。
「仮想通貨なら添付書類は何もいらない」と思われがちですが、それは早いです。仮想通貨の利益は原則として雑所得ですが、事業との関係や取引の規模、帳簿をつけているかどうかで所得区分が変わります。ご自身の場合は、国税庁FAQ「2-2 暗号資産取引の所得区分」で確認するのが良いです。国税庁・暗号資産FAQ(2-2、本文16頁)
令和7年分の手引きと作成コーナーで確認できる書類を、下の表にまとめました。
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| 申告する所得・内容 | 確認する条件 | 提出・提示する主な書類 |
|---|---|---|
| 仮想通貨の取引をその他雑所得として申告 | 取引履歴CSV・年間取引報告書等で収入・必要経費を計算し、申告書へ入力する | 国税庁の「暗号資産の計算書」は添付不要。CSV・年間取引報告書は計算の根拠として保管し、依頼時は税理士へ渡す。税務署から個別に求められた場合は対応する |
| 事業所得等の青色申告 | 青色申告者として事業・営業等、農業、不動産の収入を記載 | 青色申告決算書を添付 |
| 事業所得等の白色申告 | 白色申告者として上記の収入を記載 | 収支内訳書を添付 |
| 業務に係る雑所得 | 前々年のその業務に係る雑所得の収入金額が1,000万円を超える | 収支内訳書を添付。2025年分なら、判定する前々年は2023年 |
| 医療費控除 | 医療費控除を申告する | 医療費控除の明細書を添付。医療費通知等を使う場合は手引きで確認 |
| 本人確認(書面申告) | 申告者本人のマイナンバーを記載する | 原則として本人確認書類を提示、又は写しを添付。省略できる場合は手引きで確認 |
出典:令和7年分の確定申告の手引き「申告書に添付・提示する書類」。仮想通貨の申告に関係する主な書類だけを載せています。
1点注意です。作成コーナー「暗号資産の計算書の提出の有無について」で「添付しなくてよい」と書かれているのは「暗号資産の計算書」だけです。取引履歴CSVや年間取引報告書まで、まとめて不要と言っているわけではありません。
e-Taxで申告する場合も、収支内訳書や青色申告決算書などは決められた形式で提出する必要があります。e-Tax「申告手続(所得税確定申告等)」
一方、e-Taxなら電子証明書などで本人確認をするので、本人確認書類の提示や写しの提出はいりません。e-Tax・本人確認書類の取扱い
この記事は国税庁の2025年分の様式・手引きをもとに書いています。別の年分を申告する場合は、その年の手引きを使ってください。
まずは使った取引所から、年間取引報告書と、売買・交換・入出金・報酬の履歴を取り出しましょう。国内取引所の年間取引報告書だけでは、海外取引所や別のウォレットの取引は分かりません。使ったサービスを一覧にして、履歴がいつからいつまで揃っているかを書いておくと、抜けに気づきやすいです。
仮想通貨は、売ったときだけでなく、買い物に使ったときや別のコインに交換したときも所得計算の対象になります。持っているだけで値上がりした分と、こうした取引で出た所得は分けて考えましょう。国税庁FAQ「1-1〜1-3」
手数料などを経費に入れるなら、領収書や請求書も残しておきます。払ったものが何でも全額経費になるわけではありません。どの取引のための支払いか、いくらを計算に入れたか、私用の分が混ざっていないかが分かるようにしておきましょう。国税庁FAQ「2-3 暗号資産の必要経費」
損益計算ツールの結果やExcelは、取引履歴と一緒にその年のフォルダーに入れておくと便利です。集計結果だけ残すより、元の履歴と「どこをなぜ直したか」のメモまで揃っている方が、あとで「この金額はどう計算したんだっけ?」と迷わずに済みます。
DeFiを使った方は、ウォレットアドレス・使ったチェーン・何をした取引かをセットでまとめておきましょう。詳しくはご依頼に必要な資料一覧で確認できます。
「青色申告だから、仮想通貨の資料も全部7年保存」とは限りません。
下の表の青色・白色申告のルールは、その制度の対象になる事業などの帳簿・書類についての話です。別の事業で青色申告をしていても、個人投資として行うその他雑所得の仮想通貨取引の資料まで、一律7年になるわけではありません。どの所得に当たるかに加えて、どの業務の資料なのかも確認する必要があります。
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| 対象 | 保存する帳簿・書類 | 保存期間・条件 |
|---|---|---|
| 青色申告の対象事業等に関する資料 | 仕訳帳・総勘定元帳等の帳簿、損益計算書・貸借対照表・棚卸表等の決算関係書類 | 7年 |
| 青色申告の対象事業等に関する資料 | 領収証・預金通帳等の現金預金取引等関係書類 | 原則7年。前々年分の事業所得及び不動産所得の金額が300万円以下の場合は5年 |
| 青色申告の対象事業等に関する資料 | 上記以外の請求書・見積書・契約書・納品書等 | 5年 |
| 白色申告で事業所得・不動産所得・山林所得を生ずべき業務を行う方 | 収入・必要経費を記載する法定帳簿 | 7年。所得税等の申告が不要な場合も制度の対象 |
| 上記の白色申告の方 | 任意帳簿、棚卸表、業務上の請求書・領収書等 | 5年 |
| 業務に係る雑所得がある方 | その業務の現金預金取引等関係書類 | 前々年分のその業務に係る収入金額が300万円を超える場合、5年 |
青色申告は国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」の保存期間表、白色申告・業務雑所得は国税庁「個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」をもとにしています。青色申告の対象は事業所得・不動産所得・山林所得のある方です。国税庁No.2070
「300万円」の判定は取り違えやすいので注意しましょう。青色の現金預金書類の短縮条件は前々年分の事業所得及び不動産所得の「金額」、業務雑所得の保存条件は前々年分のその業務の「収入金額」です。2025年分なら前々年は2023年です。
「その他雑所得」と「業務に係る雑所得」も別物です。表の業務雑所得のルールをそのままその他雑所得に当てはめて「全員5年保存」とすることはできません。資料ごとに、どの制度が当てはまるかを確認するのが良いです。
個人事業者の帳簿・書類については、帳簿は閉鎖した年の翌年3月15日の翌日から、書類は作成・受領した年の翌年3月15日の翌日から、7年又は5年を数える扱いが示されています。何年保存が必要かは税法ごとに確認が必要なので、処分する日を決めるときは、制度・書類・対象年分を確認しましょう。国税庁・電子取引関係Q&A問17(本文10頁)
消費税やインボイスの対象になる方は、そちらの保存ルールもあります。仕入税額控除に関する請求書や適格請求書の写しは、上の表とは別に7年間の保存が必要な場合があります。国税庁・保存期間表の消費税に関する注記
保存期間が過ぎたからといって、すぐ捨てて良いとは限りません。まだ持っている仮想通貨があれば、売るときに昔の購入履歴が必要になるからです。
数年前に買ったコインの購入履歴が取引所に残っていない、ということは珍しくありません。数年前に買った仮想通貨を今も持っているなら、その購入履歴は古くても捨てない方が安心です。取得価額と、前年から何枚持ち越したかが分かる資料を、年末残高や計算結果と一緒に残しておきましょう。
データは年・取引所・書類の種類ごとに分けて、元ファイルとは別の場所にもバックアップしておくと、紛失したときに助かります。
ただし、クラウドや外付けディスクに入れれば法律上の電子保存の条件を満たせる、というわけではありません。電子取引のデータ保存義務がある方は、電子でやり取りした請求書などを、決められた要件に沿って保存する必要があります。国税庁・電子帳簿等保存制度の説明
仮想通貨が赤字でも、「確定申告はしなくていい」とは限りません。給与やほかの所得によって、申告が必要になることがあります。国税庁No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
雑所得の仮想通貨の損失は、給与など他の所得から差し引くことはできません。ただ、損失を他の所得から引けるかどうかと、申告が必要かどうかは別の話です。国税庁FAQ「2-11 暗号資産取引で損失が生じた場合」
「本当に赤字だったのか」をあとで確認できるように、取引履歴と計算結果は残しておきましょう。事業所得に当たる場合や、住民税の申告が必要かどうかは、別に確認が必要です。
まずは申告する年分の手引きで提出書類を確認しましょう。この記事では国税庁の2025年分の手引きを例にしています。そのうえで、使った取引所・ウォレットの履歴、経費の根拠、計算結果を整理していきます。
当事務所のLINEで申告準備の特典を配布していますので、そちらもご活用ください。ただ、チェックリストだけで、ご自身の申告が必要かどうか、どの所得に当たるかまでは判断できません。迷ったら早めに専門家に確認するのが良いです。
「自分で計算するのは難しそう」「税理士に任せたい」という方は、まず国内取引所・海外取引所・DeFi・NFT別の必要資料一覧をご覧ください。全部揃えてからでないと相談できない、ということはありません。手元にない資料があってもご相談いただけます。
海外取引所やDeFiで履歴が複雑な方は、暗号資産の損益計算サービスでどこまで対応しているかをご確認ください。
個人の損益計算や確定申告のご依頼は、見積相談フォームからご連絡ください。税理士が2営業日以内にメールで見積もりをご案内します。全国オンラインで対応しています。
まずは、取引履歴・経費の資料・損益計算の結果を揃えるところから始めてみましょう。そこから「税務署に出す」「手元に残す」「税理士に渡す」の3つに分けると整理しやすいです。決算書や収支内訳書を出す必要があるかは、所得の種類と条件で決まります。
資料を何年残すかも、所得の種類と書類によって違います。法律上の保存期間は守りつつ、まだ持っている仮想通貨の取得価額や持ち越した数量が分かる資料は、後の計算のために残しておきましょう。
この記事は個人の所得税の申告資料に関する一般的な説明です。提出書類の具体例は令和7年分の資料に基づいています。申告する年分の資料とご自身の状況をあわせて確認してください。
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