仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年10月20日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
「仮想通貨の期末評価」や「時価評価課税」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
法人が仮想通貨を保有している場合、決算期末時点の時価で評価を行い、その含み損益を課税対象とするルールがあります。これがいわゆる「時価評価課税」です。
ただし、一定の条件を満たすことで、期末の時価評価課税を回避する方法も存在します。
一方で、個人が保有する仮想通貨には期末評価による課税はなく、売却や交換などの取引が発生した時点で課税されます。
この記事では、法人における仮想通貨の期末評価の基本から、時価評価を回避できる暗号資産の種類、そして注意すべき「みなし譲渡課税」までをわかりやすく解説します。
目次
法人が仮想通貨を保有している場合、原則として期末時点の時価で評価し、その評価差額を損益計上する必要があります。
この「時価評価課税」は、すべての法人が対象であり、一人法人でも上場企業でも対象となっています。
しかし、すべての暗号資産が対象ではなく、一定の条件を満たす資産については時価評価課税を避けることも可能です。
それが、次に解説する「特定自己発行暗号資産」と「特定譲渡制限付暗号資産」「活発な市場が存在しない暗号資産」です。
法人が保有する仮想通貨は、次のように分類されます。
|
区分 |
時価評価課税の要否 |
|
特定自己発行暗号資産 |
対象外(時価評価不要) |
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特定譲渡制限付暗号資産 |
対象外(時価評価不要) |
|
活発な市場が存在しない暗号資産 |
対象外(時価評価不要) |
|
上記以外の暗号資産 |
対象(時価評価が必要) |
法人で仮想通貨の期末評価を行う際は、次の手順で進めます。
「特定自己発行暗号資産」とは、以下の2条件を満たすものを指します。
つまり、自社発行のトークンなどが該当します。
これらは時価評価課税の対象外となり、期末時点での評価替えを行う必要はありません。
「特定譲渡制限付暗号資産」とは、以下の要件を満たすものです。
国内の仮想通貨取引所の中には、こうした通知手続を受け付けている取引所もあります。
一方で、海外の仮想通貨取引所やDEXでは2つ目の要件を満たせないため、海外で保有する仮想通貨は基本的に時価評価課税が適用されます。
「活発な市場」とは、下記をすべて満たす仮想通貨となります。
① 継続的に売買価格等が公表され、かつ、その公表される売買価格等がその暗号資産の売買の価格又は交換の比率の決定に重要な影響を与えているものであること。
② 継続的に上記①の売買価格等の公表がされるために十分な数量及び頻度で取引が行われ
ていること。
③ 次の要件のいずれかに該当すること。
イ 上記①の売買価格等の公表がその法人以外の者によりされていること。
ロ 上記②の取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
活発な市場を満たす仮想通貨か、そうでないかは専門的な検討が必要となりますが、一般的には、「日本の取引所に上場している仮想通貨=活発な市場が存在する」と判断するケースが多いこととなります。
法人が保有する仮想通貨を途中で「特定自己発行暗号資産」や「特定譲渡制限付暗号資産」に変更した場合、その時点での時価との差額が課税対象となる「みなし譲渡課税」が発生します。
例:
つまり、変更のタイミング次第では想定外の課税が発生することに留意すべきです。
法人が仮想通貨を保有している場合、
「どの資産が時価評価課税の対象外か」「期末評価をどう処理するか」など、
判断を誤ると税務リスクが大きくなります。
特に、特定譲渡制限付暗号資産の手続きやみなし譲渡課税の扱いは専門的です。
さらに、期末評価課税を事前に予測しておかないと、多額の税金は発生しているものの、税金を支払うだけの資金がない、という状況に陥る可能性もあります。
不明点がある場合は、仮想通貨に詳しい税理士に相談するのが安心です。
仮想通貨の期末評価や時価評価課税の取り扱いは、税務調査でも重点確認される領域です。
適正な評価と申告を行い、余計なリスクを回避しましょう。
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