仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年12月13日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
「時価評価課税」という文言を聞いたことがありますでしょうか?法人において、仮想通貨を保有している場合、期末時点の時価で評価し、含み損益は課税の対象として扱われることを時価評価課税と言います。この「期末時価評価」は、一定の条件を満たすことで期末の時価評価課税を避けることも可能です。
一方で、個人の場合には期末評価に基づく課税は行われません。個人で保有している場合、仮想通貨に関する課税は譲渡や交換、支払いなどの取引時に発生します。
この記事では、法人が仮想通貨の期末評価を行う際に知っておくべき基礎知識、時価評価課税を避けるためのやり方について解説しています。
目次
法人においては、「原則として」時価評価が必要になります。
ですが、以下のコインであれば、時価評価をしなくてもよい仮想通貨として、時価評価課税を避けることができます。
・特定自己発行暗号資産
・特定譲渡制限付暗号資産
上記の2つに関しては、後述にて解説します。
詳細は後述の条件等を見ていただければと思いますが、「原則として時価評価が必要」と表現したのは、法人が保有している暗号資産はほとんどのケースにおいて時価評価が必要になるためです。
まとめると、法人が保有する仮想通貨で
となります。
法人で所有する仮想通貨は、期末日時点の市場価格を基準として評価を行います。具体的には以下の手順を踏みます。
1.基準となる取引所や指標を選定する: 仮想通貨の時価は、取引所によって若干の差額が生じています。仮に1つの仮想通貨取引所を利用しているのみであれば、その取引所の時価を採用することが有効ですが、複数の仮想通貨取引所を活用しているのであれば、Coinmarketcap、Coingeckoなどの仮想通貨の時価を採用するのが良いでしょ。
2.期末時点の価格を取得する: 上記で選定した取引所や指標にて、決算期末日における時価を算出します。算出された時価をもとに、仮想通貨を時価で評価し、含み損益は利益もしくは損失として法人の決算に入力します。
法人で保有する暗号資産であっても、特定自己発行暗号資産と特定譲渡制限付暗号資産は時価評価課税の対象外として扱うことができます。
ここでは、時価評価が不要なその2種類の暗号資産について解説します。
特定自己発行暗号資産とは、次の2つの要件を両方とも満たす仮想通貨となります。
要件1:自己が発行し、かつ、その発行の時から継続して自己が保有する暗号資産
要件2:その暗号資産の発行の時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されているもの
これは、いわゆる自社発行の暗号資産のことを指しており、自社発行暗号資産は時価評価課税の対象外として扱うことができます。
特定譲渡制限付き暗号資産とは、次の2つの要件を両方とも満たす仮想通貨となります。
要件1:その暗号資産につき、特定条件(譲渡制限など)が付されていること
要件2:その内国法人が、その暗号資産につき、暗号資産交換業者が認定資金決済事業者協会を通じて特定条件が付されていることを公表するためのその暗号資産交換業者に対する特定条件通知その他の一定の手続を行っていること
これは、譲渡制限などの処理がかけられている暗号資産のことを指します。
ですが、要件2にあるように、譲渡制限がされていることを、暗号資産交換業者(仮想通貨取引所)に通知していることも必要となります。
そのため、要件2を満たしてくれる仮想通貨取引所でなければなりません。日本の仮想通貨取引所であれば、期末の時価評価課税除外の申請を受け付けてくれる取引所も存在しますので、その取引所に依頼する必要があります。
ですが、海外の仮想通貨取引所やDEX(分散型取引所)においては、要件2を満たすことはないので、海外の仮想通貨取引所やDEXを使い、法人で保有している仮想通貨は時価評価課税が必須ということになります。
法人が自己の計算において有する暗号資産について、その事実に応じた認識時においてその暗号資産を譲渡(みなし譲渡)し、かつ、その暗号資産を取得したものとみなして、その法人の各事業年度の所得金額の計算をすることとなります。
これはつまり、法人が保有している暗号資産を特定自己発行暗号資産もしくは特定譲渡制限付暗号資産に変換した時点で、変換時の時価と取得価額との差額を利益もしくは損失として認識することとなります。
例えばですが、1BTCを1,000万円で購入し、決算期末付近で1BTC=1,500万円にまで時価が上昇していた場合に、このタイミングで特定譲渡制限付暗号資産として譲渡制限をかけたとしても、購入時から特定譲渡制限付暗号資産として変更するまでの間の時価の上昇分である500万円は課税の対象となってしまうのです。
今回は、法人で仮想通貨を保有している場合の時価評価課税と、その対象外についての解説となります。特定自己発行暗号資産や特定譲渡制限付暗号資産については、かなり詳細な条件がありますので、実際に法人保有の仮想通貨を時価評価課税の適用除外にしたいというのであれば、専門家に相談するのをお勧めします。
弊社でも法人での仮想通貨運用、時価評価課税の適用除外の可否についても相談を受けています。