仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年12月13日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年12月、国税庁より令和6事務年度(2024年7月1日~2025年6月30日)の税務調査の概要が公表されました。
その中でも特に注目すべきは、依然として厳しい監視が続く暗号資産(仮想通貨)に対する税務調査の状況です。
本記事では、国税庁が発表した最新の統計資料に基づき、仮想通貨に関する税務調査の最新実態を徹底解説します。
目次
国税庁は、毎年「所得税及び消費税調査等の状況」という統計資料を発表しています。
最新の資料(令和6事務年度)においても、「インターネット取引を行っている個人に対する調査状況」という項目で、暗号資産が名指しで取り上げられています。
国税庁のレポートには次のような強い姿勢が示されています。
インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(注)に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人に対しては、資料情報の収集・分析に努め、積極的に調査を実施しています
つまり、暗号資産(仮想通貨)は依然として国税庁の重点調査項目であり、手綱が緩められる様子は全くありません。
2024年7月~2025年6月の1年間(令和6事務年度)における仮想通貨関連の税務調査の実績は以下のとおりです。

(国税庁「令和6事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」より)
前年(令和5事務年度)に比べ、調査件数・追徴税額ともに増加しており、国税庁が調査体制を強化していることが数字にはっきりと表れています。
特に衝撃的なのは「1件あたりの追徴税額」の高さです。
暗号資産等取引を⾏っている個人に対する調査の1件当たりの追徴税額は 745 万円 と、所得税の実地調査(特別・一般)全体の 299 万円に⽐べ、2.5 倍となっています。
一般の税務調査に比べて、仮想通貨の調査は2.5倍ものペナルティ(追徴税額)が発生しているのが現実です。「仮想通貨=高額な脱税」として、完全にターゲットにされています。
仮想通貨関連の税務調査に入られた場合、言い逃れはほぼ不可能です。その根拠が、異常に高い「脱税指摘率」です。
令和6事務年度:調査613件中、575件で申告漏れを指摘(93.8%)
前年の91.8%からさらに上昇し、約94%という驚異的な確率で申告漏れが指摘されています。
これは、国税庁が取引所などから入手したデータを事前にAI等で徹底的に分析し、「確実にクロ(脱税している)」と断定できた相手に絞って調査に入っている証左です。
かつての特定のコインバブル(ADA等)による一過性の利益だけでなく、恒常的に高額な利益を得ている投資家への包囲網が狭まっています。
今回の統計で特筆すべきは、1件あたりの申告漏れ所得金額が「2,538万円」(前年 2,356万円)へと増加している点です。
これは、億り人クラスだけでなく、数千万単位の利益を出している準富裕層クラスに対しても、より精度の高い調査が行われていることを示唆しています。
国税庁は調査対象の選定において「AI(人工知能)」の活用を明言しており、その精度は年々向上しています。
資料内でも「選定にAIを活用するなど、効率的かつ的確に調査等を行った」との記載があり、人間の目では見逃していたような小口や複雑な取引も、AIによって自動的にピックアップされるようになっています。
これにより、以下のような「油断」は命取りになります。
「サラリーマンで仮想通貨利益が数十万円程度だからバレないだろう」
「海外取引所を使っているから日本の国税には把握されないだろう」
海外の仮想通貨取引所については、CARFという制度が2026年からスタートします。
これは、海外の仮想通貨取引所と現地の税務署による情報の連携がされるということです。
さらに、ウォレットについても、海外ではブロックチェーン解析企業と税務署が提携し、ブロックチェーン上の脱税を指摘したという事例が存在しています。国税庁はブロックチェーン解析企業と提携して、効率的に脱税を検出するでしょう。
無申告の状態で税務調査が入ると、本来の税金に加え、無申告加算税や重加算税といったペナルティが課されます。
仮に100万円の税金を逃れていた場合:
本来の税額:100万円
追徴課税(約30%〜40%):30万〜40万円
合計支払額:130万〜140万円
一時の迷いで申告を怠ると、結果として利益の多くを失うことになります。
しかし、税務調査の通知が来る前に自ら「修正申告(期限後申告)」を行えば、ペナルティ(加算税)を大幅に軽減することが可能です。
過去の無申告や計算ミスに気づいた場合は、1日でも早く自ら申告することが、資産を守るための唯一の方法です。
弊社では、過去の修正申告の業務も承っております。
下記の公式LINEよりお問い合わせください。
まとめ
仮想通貨は令和6年度も最重点監視分野であり、調査件数は増加傾向。
調査に入られた場合の「脱税指摘率」は約94%。逃げ切ることはほぼ不可能。
1件あたりの追徴税額は745万円と、通常の調査の2.5倍。
AI選定により、富裕層だけでなく一般的な投資家も捕捉されるリスクが増大。
「バレないだろう」という安易な考えは捨て、正しく申告・納税を行いましょう。
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