仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年07月2日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
近年、仮想通貨(暗号資産)に対する税制見直しの声が高まっています。
中でも期待が大きいのが「分離課税の導入」つまり、株式と同様に一律20.315%の税率で課税されるという仕組みです。
しかし、2024年の国会答弁を深読みすると、「全員が対象になるわけではない」という可能性が見えてきました。
今回はその真相と、今後の仮想通貨税制がどうなるのかを、税理士の視点からわかりやすく解説します。
目次
日本では、仮想通貨の利益は「総合課税」の対象。
その結果、
という、極めて厳しい税制が敷かれてきました。
たとえば、ある年に2,000万円の損失を出し、翌年に2,000万円の利益を得たとしても、通算できずに税金が課されてしまいます。
2024年の国会で、ついに「暗号資産に対する分離課税の導入を検討する」との回答がなされました。
SNSなどでは「ついに税率20%になる!」と歓喜の声が上がったものの、よく読むと条件付きの制度導入であることが判明。
そこにはいくつかの「前提条件」が提示されていたのです。
国会答弁の要約をすると以下の通りです。
これらの文言から読み取れるのは、「誰でも対象になるわけではない」「すべてのコインが対象になるわけではない」という点です。
実際に、2024年末に公表された税制改正大綱においても
暗号資産取引に係る課税については、一定の暗号資産を広く国民の資産形成に資する金融商品として業法の中で位置づけ、上場株式等をはじめとした課税の特例が設けられている他の金融商品と同等の投資家保護のための説明義務や適合性等の規制などの必要な法整備をするとともに、取引業者等による取引内容の税務当局への報告義務の整備等をすることを前提に、その見直しを検討する。
と記載してあることから、国会答弁の回答は上記の税制改正大綱が基本となっていることがわかります。
ここからは、私の個人的な予想をもとに暗号資産の分離課税導入がどうなるかを予測します。(2025年6月時点)
実際に、暗号資産の分離課税がどのように導入されるかについては、2025年6月時点において未定でありますので、ご承知おきください。
「一定の暗号資産」とは、金融庁やJVCEA(日本暗号資産取引業協会)による審査を通過したコインのみが対象になると見られます。
したがって、
これらは分離課税の対象外となる可能性があります。
特に、海外の仮想通貨取引所については、無登録で暗号資産交換業を行う者として金融庁は警告を出しています。
警告を出しているくらいですので、金融庁が海外の仮想通貨取引所で扱っている仮想通貨を金融商品として認めるのは考えにくいと思います。
金融庁の監督が届く範囲、つまり日本国内の仮想通貨取引所に限定される可能性もあります。
海外のサービスには投資家保護の規制が及ばないため、そもそも税制の枠組みに入れないということです。
現在でも一部の国内取引所は税務署にデータ提供を行っていますが、分離課税の導入にはより高度な連携が求められます。
たとえば、
といった体制を整備することが前提とされている可能性があります。
上記の前提条件から導き出される制度像は以下の通り:
条件 |
想定される制度内容 |
対象取引所 |
金融庁認可の国内取引所のみ |
対象コイン |
金融庁(JVCEA)が認定したコインに限定 |
税務処理 |
取引所側で損益計算+報告、特定口座方式に類似 |
このような仕組みが整った専用取引環境でのみ、分離課税が適用される未来が見えてきました。
現在、仮想通貨を保有しており、
という投資家も多いかもしれません。
こちらについてですが、上記のように、海外の仮想通貨取引所部分は分離課税が導入されず、総合課税のままになる可能性があります。
国内の仮想通貨取引所については、過去の含み益も分離課税が適用される可能性がありますが、現時点(2025年6月)においては、過去の含み益をどのようにして税金計算するのかの議論がされている最中になっています。こちらは続報を待ちましょう。
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