仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年11月29日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
DeFi(分散型金融)で流動性提供(イールドファーミング)を行う際に受け取る「LPトークン」。このトークンを受け取った瞬間、税金は発生するのでしょうか?
今回は、現時点での日本の税制におけるLPトークンの扱いについて、以下の5つのポイントで解説します。
目次
LP(Liquidity Provider)トークンとは、UniswapやPancakeSwapなどのDEX(分散型取引所)に流動性を提供した際に、その対価・証明として受け取るトークンのことです。
例えば、Uniswapに「1 ETH」と「3,000 USDC」をペアで預け入れたとします。この時、あなたの手元のウォレットからはETHとUSDCが消え、代わりに「Uniswap V2 LP」のようなトークンが入ってきます。
LPトークン取得について、よくある質問が、「LPトークンを取得したものの、これは仮想通貨同士の交換として課税が発生するのかどうか?」です。
結論から申し上げますと、現時点(2025年11月)では国税庁からの「明確な正解(公式見解)」はありません。
国税庁からは、暗号資産に関するFAQは多数出ていますが、「流動性提供時のLPトークン取得」をピンポイントで定義した通達は存在しないのが現状です。
そのため、実務上は税理士によって見解が分かれることがあり、納税者自身がいずれかのロジックを選択して申告する必要があります。
現在、実務で議論されている主な考え方は以下の2パターンです。
「手持ちのコイン(A+B)を手放して、新しいコイン(LPトークン)を手に入れた」と考える方法です。LPトークン自体は売却や移動が可能であることから、仮想通貨同士の交換と判断し、課税イベントとする方法です。
「コインを預けただけであり、所有権はまだ自分にある(売っていない)」と考える方法です。LPトークンは単なる「預かり証」とみなすためです。
ここで、LPトークンの扱いについて、損益計算ツールはどのようになっているのか見てみましょう。
クリプタクトとG-taxにおいて、LPトークン取得時の扱いは、「課税イベントではない」を採用しています(2025年11月時点)
クリプタクト:こちら
G-tax:こちら
これは、損益計算ツールにおいては、LPトークンの取得は単なる「預かり証」としての性質が強いという判断のもと、このような処理を採用しているものと推測します。
ここで一つの判断材料となるのが、税務大学校(国税職員の研修機関)の上村教授が執筆した論文です。
詳細はこちら
こちらの資料においては、①課税イベントになる。と判断しています。
4 本件LPトークン等の課税上の取扱いについての考察
「LPトークン」という暗号資産であると判定される場合には、税務上、
暗号資産同士の交換を行った場合には、所得金額の計算を行うこととされて
いるから、「流動性供給は課税イベントである」という上記3の立場をとるこ
とになろう。
ただし、税務大学校の論文は「国税庁の公式見解」ではありません。 あくまで執筆した研究員個人の見解です。
LPトークンの取得時における課税・非課税の判断は、投資家の資産状況やリスク許容度によって変わります。
税務署から指摘を受けた際に「なぜその処理を行ったか」を論理的に説明できる準備をしておくことが最も重要です。金額が大きい場合は、暗号資産に詳しい税理士に相談することをお勧めします。
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