仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2024年09月9日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨マイニングは、近年大きな注目を集めています。マイニングによって仮想通貨を獲得し、収入を得ることができるため、多くの人が参入しています。しかし、マイニングによる収入は、税務上どのように扱われるのでしょうか?適切な税務処理を行わないと、後々トラブルに巻き込まれる可能性があります。
本記事では、仮想通貨マイニングの基礎知識から、マイニング収入に対する税務上の取り扱いまで、詳しく解説します。具体的な計算事例や申告方法、よくある質問への回答を通じて、読者の皆様が確定申告を円滑に進められるようサポートします。マイニングによる収入を得ている方、これから始めようと考えている方は、ぜひ参考にしてください。
仮想通貨マイニングとは、仮想通貨のネットワークを維持するために、取引の承認作業を行うことです。マイナーは、取引データを検証し、ブロックチェーンに追加する作業を競争的に行います。その見返りとして、新たに発行される仮想通貨を報酬として受け取ることができます。
マイニングには、主にPoW(Proof of Work)とPoS(Proof of Stake)の2種類があります。PoWは、コンピューターの演算能力を使って計算問題を解くことで、取引の承認を行う方式です。一方、PoSは、保有する仮想通貨の量に応じて、取引の承認権が与えられる方式です。
マイニングの収益性は、仮想通貨の価格変動や、電気代、機材費用などのコストに大きく影響されます。また、マイニングには、機材の故障やハッキングのリスクもあるため、十分な対策が必要です。
マイニングによる収入は、税務上どのように扱われるのでしょうか?原則として、マイニング収入は「事業所得」または「雑所得」として申告する必要があります。
事業所得とは、自分で事業を営んでいる場合の所得を指します。マイニングを事業として行っている場合、マイニング収入は事業所得として申告します。一方、雑所得とは、事業所得や給与所得などに当てはまらない所得を指します。マイニングを副業として行っている場合、マイニング収入は雑所得として申告します。
マイニング収入の計算方法は、「収入金額-必要経費」で求められます。収入金額は、マイニングによって得た仮想通貨の価値を、日本円に換算して計算します。必要経費には、電気代や機材費用、インターネット回線料金などが含まれます。
ただし、必要経費の計上には注意が必要です。必要経費の範囲は事業所得と雑所得で異なっております。雑所得の必要経費はかなり限定的になっています。また、機材費用は、一時の経費として計上するのではなく、耐用年数に応じて減価償却する必要があります。
国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」にて、マイニングにかかる税金のタイミングが計上されております。
問.マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合の所得税又は法人税の課税関係はどのようになりますか。
答. マイニング、ステーキング、レンディングなどにより暗号資産を取得した場合、その取得に伴い生ずる利益は所得税又は法人税の課税対象となります。いわゆる「マイニング」、「ステーキング」、「レンディング」など(以下「マイニング等」と いいます。)により暗号資産を取得した場合、その取得した暗号資産の取得時点の価額(時価) については所得の金額の計算上総収入金額(法人税においては益金の額)に算入され、マイニ ング等に要した費用については所得の金額の計算上必要経費(法人税においては損金の額)に算入されることになります。
(国税庁の「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)」1-6より)
つまり、マイニングに関しては、そのマイニングの報酬を受け取った時点で、受け取った時価相当額を利益として認識することとなります。
マイニング報酬を日本円に換金したタイミングではありませんので、留意が必要です。
それでは、マイニング収入の具体的な計算事例を見ていきましょう。
【PoWマイニングの計算例】
A氏は、1年間BitcoinのPoWマイニングを行い、合計2BTCを獲得しました。マイニングに使用した電気代は年間60万円、機材費用は200万円(耐用年数4年)でした。Bitcoinの価格は、獲得時の平均価格が1BTC=500万円だったとします。
収入金額:2BTC × 500万円 = 1,000万円
必要経費:
– 電気代:60万円
– 機材費用の減価償却費:200万円 ÷ 4年 = 50万円
合計:110万円
所得金額:1,000万円 – 110万円 = 890万円
【PoSマイニングの計算例】
B氏は、1年間EthereumのPoSマイニングを行い、合計10ETHを獲得しました。マイニングに必要なコストはほとんどかかりませんでした。Ethereumの価格は、獲得時の平均価格が1ETH=20万円だったとします。
収入金額:10ETH × 20万円 = 200万円
必要経費:0円
所得金額:200万円 – 0円 = 200万円
このように、マイニングの方式や獲得した仮想通貨の種類によって、収入金額や必要経費の計算方法が異なります。正確な所得金額を算出するためには、詳細な記録を残しておくことが重要です。
マイニング収入を得た場合、確定申告を行う必要があります。申告の方法は、所得の種類によって異なります。
事業所得として申告する場合は、「青色申告」または「白色申告」を選択します。青色申告を行うと、特別控除などの優遇措置を受けられるため、節税効果が期待できます。ただし、帳簿の記帳や一定の書類の提出が必要となります。白色申告の場合は、こうした手間はありませんが、節税効果は限定的です。
雑所得として申告する場合は、総合課税の対象となるため、他の所得と合算して税額が計算されます。
確定申告の際は、以下の書類を準備しておく必要があります。
・確定申告書
・収支内訳書(事業所得の場合)
・マイニングによる収入と経費の明細
・必要経費の領収書や証拠書類
これらの書類を揃えた上で、確定申告書を記入し、申告書を税務署に提出します。提出は、郵送または電子申告(e-Tax)で行うことができます。申告期限は、原則として毎年2月16日から3月15日までです。
なお、マイニングによる収入と経費の明細、必要経費の領収書や証拠書類に関しては、確定申告書に添付する必要はなく、保存義務があるのみです。確定申告書のための根拠資料として書類を保存しておきましょう。保存期間は7年間となります。
なお、税金の納付は、申告書の提出とは別に行う必要があります。税務署から送付される納税通知書に基づき、指定された期限までに金融機関やコンビニエンスストアで納税します。
仮想通貨マイニングは、今後も発展が期待される分野です。一方で、税制の変更や新たな規制の導入など、不確定要素も多くあります。マイニングによる収入を得る際は、税務リスクを十分に理解し、適切な管理体制を整えることが重要です。
本記事では、マイニング収入の税務処理について、基本的な事項を解説しました。読者の皆様には、本記事を参考に、適切な税務処理を行っていただきたいと思います。
マイニングの世界は、常に変化し続けています。今後も、税制の動向や新たな技術の登場など、注意すべき点は多岐にわたります。読者の皆様には、最新の情報を入手し、適切な判断を下していただくことをお願いいたします。
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