仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年09月18日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
近年、仮想通貨取引が注目を集めており、個人事業主やフリーランスの方々の中にも、仮想通貨投資に興味を持つ人が増えています。しかし、仮想通貨取引に関する確定申告の方法や注意点について、十分に理解している人は多くありません。本記事では、個人事業主が仮想通貨取引の確定申告を正しく行うためのポイントを解説します。
目次
仮想通貨による利益は、原則「雑所得」として課税されます。
これは、株式やFXのように分離課税(20%固定)ではなく、総合課税の対象となり、給与や事業所得など他の所得と合算されて税率が決まる点が大きな特徴です。
税率は累進課税により、所得が増えるほど高くなり、最大で55%(所得税45%+住民税10%)に達することもあります。
課税対象となる典型的な取引例は以下の通りです。
(主な課税対象の取引)
特に見落としやすいのが「仮想通貨同士の交換」です。
たとえば、10万円で購入したBTCを時価20万円相当のETHに交換した場合、その時点で10万円の利益が発生し課税対象となります。日本円に換金していないのに税金が発生することとなります。
仮想通貨取引に必要な支出は「必要経費」として計上できます。経費にできる範囲をしっかり押さえることで、課税所得を減らし、結果的に税金を抑えることが可能です。
経費になる代表的な例は以下です。
注意点として、プライベートと事業利用が混在する場合には按分計算が必要です。
たとえば、自宅PCを半分は仮想通貨取引に、半分は私用に使っている場合は「50%」を経費として認められる、という計算が必要になることもあります。
仮想通貨の必要経費についての詳細は、下記の記事を参照ください。
個人事業主は通常、事業所得を確定申告にて申告する必要があります。この際、仮想通貨取引を「雑所得」として一緒に申告することとなります。
なお、個人事業主は仮想通貨取引を事業所得として計上できるのか?という質問を受けることがあります。
事業の内容によっては、仮想通貨取引を事業所得として計上することも可能です。
事業所得で申告できると以下のメリットがあります。
仮想通貨を事業所得として計上するためのメリットや詳細については下記をご参照ください。
ただし、事業所得として認められるには、国税庁が示す「事業所得の要件」を満たす必要があります。
すなわち「独立して営まれ、営利性・有償性があり、反復継続して行われ、社会通念上事業と認められること」が必要です。
👉 ポイントは「単なる趣味的な投資か、それとも事業として行っているか」です。
取引量が多く、専用設備や時間をかけて取り組んでいる場合には事業性が認められる可能性が高まります。
「仮想通貨の利益が20万円以下なら申告不要」というのはよく聞くかと思います。
この特例は会社員などで年末調整済みかつ副収入が20万円以下の場合に限られます。
一方で、個人事業主は事業所得と合わせて申告する義務があるため、利益が1円でも発生すれば確定申告が必要となります。
個人事業主は事業活動で赤字が出た場合、その損失を仮想通貨取引の利益と相殺できる場合があります。
例えば、事業所得が -50万円、仮想通貨取引の利益が +40万円であれば、合算すると -10万円となり、課税所得がゼロになります。これにより、所得税や住民税を大きく抑える効果が期待できます。
ただし、逆のパターンは不可能です。
仮想通貨を雑所得として計上し、仮想通貨でマイナス40万、事業所得がプラス50万円の場合は相殺がされないこととなります。
個人事業主が、本業の売上代金として仮想通貨を受け取った場合、その受け取り時点の仮想通貨の時価で売上高を計上する必要があります。さらに、その仮想通貨をすぐに利確したとしても、計上時の時価と利確時の時価は若干の差が生じることとなりますが、それは事業所得等の基因となる行為に付随したものとして事業所得として認識することが可能です。
国税庁の暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(情報)にて、下記の記載からそのような処理が可能です。
なお、「暗号資産取引が事業所得等の基因となる行為に付随したものである場合」、例えば、 事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として 暗号資産を使用した場合は、事業所得に区分されます。
また、本業の収入は仮想通貨で受け取り、そのままその仮想通貨を投資として運用している場合、受け取り時の時価は事業所得に計上し、仮想通貨の運用益は雑所得として計上することとなります。
実務上、一つのウォレットアドレスや取引所アカウントで、複数の所得(事業所得と雑所得)が計上されている場合の損益計算は非常に難解です。
計算をやりやすくするためにも、取引所アカウントやウォレットアドレスを事業所得用とトレード用の2つに分けることを推奨します。
個人事業主が仮想通貨取引を行う場合には、会社員とは異なる点が多いため、しっかりと理解しておく必要があります。
確定申告を正しく行うことで、余計な税務リスクを避けつつ、節税につなげることが可能です。
不明点がある場合は、仮想通貨に詳しい税理士に相談することをおすすめします。
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