2025年07月2日

仮想通貨/暗号資産

【徹底解説】仮想通貨の税務調査は国税庁も苦戦中?その理由とは

この記事の監修者

村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

仮想通貨の確定申告、大変ですよね。
実はこの「大変さ」、納税者だけでなく、税金を徴収する側、つまり国税庁や税務署にとっても同じなのです。

2024年5月、東洋大学法学部の泉純也教授が「暗号資産の税務調査と税務執行上の課題という論文を発表しました。

今回は、その内容をもとに、仮想通貨を取り巻く税務の難しさについて分かりやすく解説します。

仮想通貨の税務が難しい理由とは?

1. 匿名性と分散性

仮想通貨の魅力である「匿名性」「分散性」は、税務の観点から見ると大きな障壁になります。
たとえば、

  • KYCなしの海外取引所

  • 分散型取引所(DEX)

  • プライベートウォレット(MetaMask等)

これらの存在はいずれもKYCといわれる本人情報の登録なしに利用することが可能です。

そのため、「誰がどの資産を持っているか」の特定が非常に難しくなっています。

2. ブロックチェーン分析の限界

ブロックチェーン上の情報は全世界に公開されていますが、「ウォレット同士の送金」以上のことは分かりません。

  • このウォレットの所有者が誰か

  • どのような目的の取引か?

といった重要な情報が欠落しているため、国税庁も調査に限界を感じています。

国税庁が注力していること

Chainanalysisなどの外部企業と連携

アメリカではIRS(日本の税務署のようなもの)において、Chainanalysisというブロックチェーン分析の会社と提携することにより、ブロックチェーンを活用した脱税を指摘することに成功したという事例があります。

今後は、日本の国税庁もブロックチェーン分析企業との提携により脱税をより高精度で把握できる体制を整えていくのではないかと期待されています。

最大の難関は「損益計算」

仮想通貨の税務で最も厄介なのが「損益計算」です。
その主な理由は以下の通り。

  • 海外取引所のデータ出力に制限があるケースがある(例:2年分のみ)

  • 取引所の破綻により取引履歴が十分に取得できない

  • 新規のチェーンについては、損益計算ツールが完全に対応していないケースがある

  • Solscanなどのウォレット解析ツールの正確性、網羅性が担保できない(例:Solscanでも誤認識がある)

  • 計算上のコインの枚数と実際のコインの枚数が不一致になりやすい

つまり、「すべての取引履歴を把握し、正確に利益を出す」こと自体が非常に高難度なのです。

税務当局も把握できない?その現実

税務署側もまた、取引データの不足や、ウォレットの所有者特定の困難さに直面しています。
しかも今後、DEXを介した不動産購入や、ウォレット同士の暗号資産取引の複雑化が進めば、追跡はますます難しくなるでしょう。

今後の展望と分離課税の可能性

国税庁が今後検討している対応策には以下のようなものがあります。

  • ブロックチェーン分析の高度化

  • 税務職員向けのトレーニング強化

  • 税務調査対応型の損益計算ツールの開発

  • 分離課税制度の導入(源泉徴収による簡略化)

納税者がすべての取引を申告するのは限界があり、今後は「第三者による損益計算と課税」が現実味を帯びてきそうです。

まとめ:今は「バレない」ではなく、「いずれバレる」

現状では、国税庁側も仮想通貨取引の全容を把握しきれていません。
ですが、最大で7年間は遡って税務調査が可能です。

「今はバレないだろう」と油断して無申告を選べば、後々延滞税・加算税・重加算税のトリプルコンボが待っています。

今後は、国税庁によるブロックチェーン解析技術が進化していきます。

さらに、仮想通貨の脱税は税務署も注視している分野なので、仮想通貨を使った脱税は目を付けられやすいでしょう。

 

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