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村上裕一公認会計士事務所MURAKAMI CPA OFFICE 見積相談

2026年10月5日

仮想通貨/暗号資産

タイの仮想通貨税制|2025〜2029年の所得税免除の条件と日本から移住する際の注意点

この記事の執筆・監修者

公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

この記事のポイント

タイでは暗号資産の譲渡益は原則として個人所得税(5〜35%)の対象ですが、2025年1月1日〜2029年12月31日に受け取る譲渡益は、タイで認可された交換所・ブローカー・ディーラーを通じた取引に限り免除されます(財務省令第399号)。2024年以後にタイの居住者であった年に得た国外源泉所得は、タイに持ち込むと原則として課税されます。日本の非居住者が国外で行う通常の現物売却は原則として日本の所得税の対象外ですが(国税庁FAQ1-8)、例外もあるため、移住前に居住者判定、出国する年の申告・住民税、出国税、相続税を確認してください。

  • タイの暗号資産の譲渡益は原則として個人所得税(累進5〜35%、500万バーツ超の部分35%)の対象。
  • 財務省令第399号により、2025年1月1日〜2029年12月31日に受け取る譲渡益は、タイ法上の認可交換所での譲渡・認可ブローカーを通じた譲渡・認可ディーラーへの譲渡に限り免除。それ以外の取引やステーキング報酬などは対象外。
  • 2024年以後にタイの居住者(その年180日以上滞在)であった年に得た国外源泉所得は、その年または後の年にタイへ持ち込んだ部分が課税対象。2024年より前に得た国外源泉所得は対象外(Paw.161/162)。
  • 日本の非居住者が国外で行う通常の暗号資産の現物売却は、原則として日本の所得税の対象外(国税庁FAQ1-8)。恒久的施設に帰属する所得や日本滞在中の国内資産の譲渡などは別に判断。
  • 出国する年の申告・納税(所得税法127条・130条)、住民税、出国税(暗号資産の現物は対象外)、相続税・贈与税(相続税法1条の3・1条の4)は移住前に確認が必要。
監修
村上裕一(公認会計士・税理士)
最終更新
2026-10-05
参照法令
タイ財務省令第399号(2025年8月27日)、タイ歳入局 PND90 記載の手引き 2024、タイ歳入局 Paw.161/2566・162/2566 Q&A/Foreigners pay tax、タイ相続税法(2015年)、国税庁 暗号資産FAQ(令和7年12月改訂)1-8、所得税法60条の2・127条・130条、相続税法1条の3・1条の4

「タイは暗号資産(仮想通貨)の税金がゼロになった」という話を聞いたことがある方もいると思います。タイでは、2025年1月1日から2029年12月31日までに受け取る個人の暗号資産の譲渡益について、所得税を免除する制度ができました。ただし、対象はタイの法律で認可された交換所・ブローカー・ディーラーを通じた取引に限られます。これらの認可を受けた経路を通さない取引の利益や、日本の居住者である間に生じた利益まで非課税になるわけではありません。

この記事では、タイの暗号資産の税制と、日本から移住する前に確認したい注意点を整理します。

この記事の結論

  • タイでは、暗号資産の譲渡益は原則として個人所得税(累進5〜35%)の対象です。2025年1月1日から2029年12月31日までに受け取る譲渡益は、タイで認可された交換所・ブローカー・ディーラーを通じた取引に限り免除されます(財務省令第399号)。
  • 2024年1月1日以後に、タイの税務上の居住者(その年に180日以上滞在)であった年に得た国外源泉所得は、その年または後の年にタイへ持ち込んだ部分が、原則として持ち込んだ年の課税対象になります。2024年1月1日より前に得た国外源泉所得を後の年に持ち込む場合は、この扱いによる課税対象にはなりません。
  • 日本の居住者である間に売却した利益は、原則として日本で課税されます。非居住者が国外に住み、日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産の現物を売却する通常のケースでは、その売却益は原則として日本の所得税の対象外です(国税庁FAQ 1-8)。ただし、日本の恒久的施設に帰属する所得や、日本滞在中に行う国内資産の譲渡などは別に判断が必要です。

タイで個人の仮想通貨の売却益は課税される?

タイでは、暗号資産やデジタルトークンを譲渡して得た利益は、個人所得税の課税対象となる所得に含まれます。タイ歳入局の個人所得税申告書(PND90)の記載の手引きにも、暗号資産・デジタルトークンの譲渡益を記入する欄があります。税率は、課税所得に応じて5〜35%の累進税率です(15万バーツまでは免除、500万バーツを超える部分は35%)。

2025〜2029年の非課税措置(財務省令第399号)

2025年8月27日付で出された財務省令第399号は、次の条件を満たす暗号資産・デジタルトークンの譲渡益を、個人所得税の対象から除いています。

  • タイのデジタル資産事業法で認可された交換所で行った譲渡、認可されたブローカーを通じた譲渡、または認可されたディーラーへの譲渡であること
  • 2025年1月1日から2029年12月31日までに受け取る所得であること
  • 免除されるのは、投資した額を超える部分(利益)であること

タイ法上の認可交換所での譲渡、認可ブローカーを通じた譲渡、認可ディーラーへの譲渡のいずれにも当たらない取引は、この免除の対象になりません。ステーキング報酬の受け取りなど、譲渡益に当たらない所得にも適用できません。報酬として取得した暗号資産を後で譲渡する場合は、その譲渡について別に要件を判定します。また、この免除は2029年12月31日までに受け取る所得に限られ、2030年以後に受け取る所得には適用されません。将来の延長や改正は、その時点の法令で確認してください。

国外で得た所得をタイに持ち込む場合

タイの居住者は、タイ国内で得た所得に加え、国外で得た所得のうちタイに持ち込んだ分に課税されます。タイ歳入局の説明では、2024年1月1日以後に、タイに180日以上滞在した年に得た国外源泉所得は、その年または後の年にタイへ持ち込んだ部分が、持ち込んだ年の課税対象になります。一方、2024年1月1日より前に得た国外源泉所得を後の年に持ち込む場合や、タイの非居住者だった年に得た国外源泉所得を後で持ち込む場合は、この扱いによる課税対象にはなりません。

海外の取引所を利用したことだけで、国外源泉所得になるとは限りません。持ち込んだお金のうちどれが課税対象の所得かも含めて個別に判断が必要なため、実際に送金する前に、最新の制度を現地の専門家に確認してください。

タイと日本の税金の比較

項目 日本 タイ
個人所得税(居住者) 所得税5〜45%(累進)+住民税所得割(標準税率10%) 5〜35%(累進。15万バーツまでは免除)。最高税率35%は課税所得500万バーツを超える部分に適用
個人の暗号資産の売却益 原則として雑所得の総合課税(所得税・住民税で最大約55%。復興特別所得税を除く) 原則として所得税の対象。2025〜2029年に受け取る譲渡益のうち、タイで認可された交換所などを通じた取引の分は免除
国外で得た所得 日本の居住者(非永住者を除く)は国外の所得も課税対象 2024年以後、居住者であった年に得た国外源泉所得は、タイに持ち込んだ年に課税
相続税 最大55% 取得者ごとに、同じ被相続人から取得した、課税対象となる相続財産の純額(債務控除後)の累計が1億バーツを超える部分に原則10%(直系尊属・卑属は5%)。配偶者の取得は対象外。課税範囲は取得者の国籍・在留資格や財産の種類・所在などによる。日本の相続税・贈与税は別に判定

タイの税務上の居住者になるのは、1年(暦年)のうちにタイに滞在した日数が合計180日以上の人です。タイの居住者になったからといって、自動的に日本の非居住者になるわけではありません。税率や制度は改正されることがあるため、移住を検討する際は現地の専門家にも確認してください。

移住しても日本で課税されるケース

① 日本の居住者である間に売却した分

日本国籍を持つ日本の居住者は、原則として国内外のすべての所得が日本の所得税の対象です。税務上の非居住者になる前に暗号資産を売却・交換して得た利益は、原則として雑所得として日本で課税されます。出国したという事実だけで非居住者になるわけではありません。

② 非居住者になった後の売却

日本の所得税法上の非居住者が国外に住み、日本の暗号資産交換業者に保有する暗号資産の現物を売却する通常のケースでは、その売却益について日本の所得税の申告は原則として不要です(国税庁FAQ 1-8)。ただし、日本の恒久的施設に帰属する所得や、日本に滞在している間に行う国内にある資産の譲渡に当たる場合などは、別に検討が必要です。一時帰国中の売却は、資産の所在や租税条約の適用も含めて判断し、一律に課税・非課税とは言えません。

日本の非居住者になっているかは、滞在日数だけでなく、住居・家族・職業・資産の所在などから「生活の本拠」がどこにあるかで総合的に判断されます。詳しくは暗号資産で海外移住|税法上の非居住者になる要件をご覧ください。

③ 出国する年の確定申告と住民税

ここでいう出国は、日本に住所・居所を有しないこととなる出国を指します(所得税法2条1項42号)。出国までの所得について確定申告が必要な場合、出国の時までに納税管理人を届け出なければ、原則として出国の時までに申告と納税をしなければなりません(所得税法127条・130条)。出国の時までに納税管理人を届け出た場合は、原則として翌年の通常の申告・納付期限によります。

個人住民税の所得割は、原則として1月1日に住所がある市区町村で、前年の所得をもとに課税されます。その後に海外へ転出しても、その年度の納税義務はなくなりません。

④ 出国税(国外転出時課税)

国外転出時課税の対象は、有価証券等や、決済していない信用取引・デリバティブ取引です(所得税法60条の2)。暗号資産の現物は、現行の対象資産に含まれていません。ただし、暗号資産の証拠金取引などで決済していないものは、デリバティブ取引として対象になり得ます。適用されるのは、対象資産の価額などの合計が1億円以上で、原則として出国前10年以内に日本に住所・居所があった期間が合計5年を超える場合などです。この1億円の判定には暗号資産の現物は含まれず、未決済のデリバティブ取引は、決済したとみなして計算した利益・損失の額などで判定します。

⑤ 相続税・贈与税

亡くなった人と財産を受け取る人がともに日本国籍を持つ一般的なケースでは、双方が国外に住んでいても、どちらかが相続の開始前10年以内に日本に住所があった場合は、海外の財産も含めて日本の相続税の課税対象になります(相続税法1条の3。基礎控除などにより実際の納税額が生じない場合もあります)。双方が10年以内に日本に住所がなかった場合でも、日本国内にある財産は日本の相続税の課税対象です。贈与も、贈与した人と受けた人の国籍・住所・過去の住所の状況で判定します(相続税法1条の4)。財産を取得する相続人などが日本に住んでいる場合や、過去10年以内に日本に住所があった場合などは、タイに移住していても日本の相続税がかかる可能性があります。なお、亡くなった人が国外転出時課税の納税猶予の特例を受けていた場合などは、通常と扱いが異なることがあるため、別に確認が必要です。

よくある質問

Q. タイに移住すれば、海外の取引所での利益も非課税ですか?

財務省令第399号の免除は、タイ法上の認可交換所での譲渡、認可ブローカーを通じた譲渡、認可ディーラーへの譲渡に限られます。これらに当たらない取引の利益は免除の対象外です。また、2024年以後にタイの居住者であった年に得た国外源泉所得をタイに持ち込むと、原則として持ち込んだ年の課税対象になります。

Q. タイに移住した後、日本の取引所で暗号資産を売ったら日本で課税されますか?

日本の非居住者が国外に住んで暗号資産の現物を売却する通常のケースでは、その売却益について日本の所得税の申告は原則として不要です(国税庁FAQ 1-8)。ただし、日本の恒久的施設に帰属する所得や、日本に滞在している間に国内にある資産を譲渡した場合などは別に検討が必要です。また、その売却代金をタイに持ち込む場合のタイでの扱いも確認してください。

Q. 出国の直前に暗号資産を売ったらどうなりますか?

売却の時点で日本の税務上の居住者であれば、その売却益は原則として日本の課税対象です。出国までの所得について確定申告が必要な場合は、納税管理人を出国の時までに届け出るかどうかで、申告・納税の期限が変わります。

まとめ

タイでは、暗号資産の譲渡益は原則として所得税の対象ですが、2025〜2029年に受け取る譲渡益のうち、タイで認可された交換所などを通じた取引の分は免除されます。認可を受けた経路を通さない取引の利益は免除の対象外で、2024年以後にタイの居住者であった年に得た国外源泉所得は、タイに持ち込むと原則として課税されます。日本では、居住者である間の売却益は原則として課税対象です。移住を考えている方は、非居住者の判定、出国する年の申告と住民税、出国税、相続税・贈与税の課税範囲を出国前に確認しておきましょう。ほかの国の場合はシンガポールの仮想通貨税制、マレーシアの仮想通貨税制で解説しています。

海外移住に伴う暗号資産の税務は、出国のタイミングや保有資産によって結論が変わります。当事務所の海外移住支援もご覧ください。

根拠資料:タイ財務省令第399号(2025年・タイ語)/タイ歳入局「Guide to Personal Income Tax Return 2024(PND90)」/タイ歳入局「Foreigners pay tax」(国外源泉所得・2024年)/タイ歳入局 Paw.161/2566・162/2566 Q&A(タイ語)/タイ相続税法(2015年・英訳)/国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」1-8/国税庁 No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例/国税庁 No.4138 相続人が外国に居住しているとき/国税庁 No.4432 受贈者が外国に居住しているとき

この記事は一般的な説明です。日本の制度は所得税法・相続税法と国税庁FAQ(令和7年12月改訂)、タイの制度は上記のタイ歳入局の公表資料にもとづいています(資料の閲覧日は2026年10月5日)。その後の改正で内容が変わることがあります。個別の判断は、日本とタイ双方の専門家にご確認ください。

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