仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2026年09月30日
仮想通貨/暗号資産
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
個人の暗号資産売却に係る雑所得・事業所得の計算では、売却価額の5%を取得価額とする取扱いがあります(所得税基本通達48の2-4・国税庁FAQ 2-7)。税率が5%になる制度ではありません。通達は取得価額が不明な場合に限定しておらず、実際の取得価額との大小で所得への影響が変わります。5%ルール専用の事前届出はありませんが、総平均法・移動平均法の選定や変更の手続とは別です。
古い取引履歴が残っていない、取引所が閉鎖して購入時の記録を取り出せない――暗号資産(仮想通貨)の損益計算では、売った暗号資産をいくらで買ったのか(取得価額)が分からないことがあります。このようなときに使われるのが、売却価額の5%を取得価額として所得を計算する取扱いで、「5%ルール」「5%特例」などと呼ばれています。税率が5%になる制度ではありません。
この記事では、5%ルールの根拠と計算方法、使う前に確認したいこと、注意点を整理します。
この記事の結論
暗号資産の売却による所得は、原則として次のように計算します。譲渡原価は、同じ銘柄ごとに総平均法か移動平均法で計算します(国税庁FAQ 2-4)。
所得金額 = 売却価額 − 売却した数量に対応する譲渡原価 − 売却手数料などのその他の必要経費
これに対して、所得税基本通達48の2-4は、暗号資産の売買による収入金額の5%に相当する金額を取得価額として事業所得や雑所得を計算している場合は、「これを認めて差し支えない」としています。国税庁FAQ 2-7でも、取得価額や売却価額が分からない場合の説明の中で、売却価額の5%相当額を取得価額とすることが認められると示しています。
取得価額(5%ルール)= 売却価額 × 5%
例:500万円で売却 → 取得価額 25万円(500万円 × 5%)
5%ルールを使うための専用の申請や届出はありません。確定申告の損益計算で、この方法により計算します。ただし、総平均法・移動平均法の選定や変更の手続とは別です。評価方法の届出をしていない場合は総平均法となり、評価方法の変更には原則として承認の申請が必要です(国税庁FAQ 2-5・2-6)。
取得価額が分からないときは、国税庁FAQ 2-7が示す次の方法で、実際の金額を確認できないか先に調べましょう。
履歴が消えたときの具体的な探し方は、取引履歴が出ない・消えたときの計算方法で解説しています。
所得税基本通達48の2-4は、5%ルールを取得価額が分からない場合に限定していません。この文言から、実際の取得価額が分かっている場合も対象になると解されます。売却した数量に対応する実際の取得価額が売却価額の5%より小さければ、5%で計算したほうが所得は小さくなります。
以下は、取得価額の違いによる影響だけを比べるモデル計算です。2015年に10万円で取得した暗号資産の全量を、2026年に2,500万円で売却し、その間に追加の取得や一部の売却はなかったものとします。所得控除・税額控除・手数料は考えず、所得金額をそのまま課税所得として計算しています。復興特別所得税、住民税の均等割・森林環境税などは含めていません。
| 実際の取得価額で計算 | 5%ルールで計算 | |
|---|---|---|
| 売却価額 | 2,500万円 | 2,500万円 |
| 取得価額 | 10万円 | 125万円(2,500万円 × 5%) |
| 所得金額 | 2,490万円 | 2,375万円 |
| 所得税(所得 × 40% − 279万6,000円) | 716万4,000円 | 670万4,000円 |
| 住民税所得割(標準税率10%) | 249万円 | 237万5,000円 |
| 比較対象税額の合計 | 965万4,000円 | 907万9,000円 |
この例では、比較対象の税額が57万5,000円少なくなります(所得の差115万円 ×(所得税40% + 住民税10%))。実際の納税額は、ほかの所得や所得控除などによって変わります。
反対に、売却した数量に対応する実際の取得価額が売却価額の5%より大きい場合は、実際の金額で計算する場合より所得が大きくなり、税負担が増えることがあります。取得価額が一部でも分かるなら、実際の金額で計算した場合と比べてから判断しましょう。
Q. 5%ルールを使うのに、税務署への届出は必要ですか?
5%ルール専用の事前の届出はありません。確定申告の損益計算で、売却価額の5%を取得価額として計算します。なお、総平均法・移動平均法の選定や変更の手続は別に定められています。
Q. 取得価額が分かっている場合でも5%ルールを使えますか?
所得税基本通達48の2-4は、取得価額が分からない場合に限定していないため、対象になると解されます。実際の取得価額が売却価額の5%より小さい場合は所得が小さくなり、大きい場合は所得が大きくなるので、両方を計算して比べてください。
Q. 法定申告期限を過ぎてから、提出済みの申告書の計算誤りに気づいたら?
納める税額が足りなかった場合は修正申告をします。納めすぎた場合は、原則として法定申告期限から5年以内に更正の請求ができます。ただし、5%ルールを適正に使って申告したあとに実際の取得価額が分かったというだけで、訂正が必要になったり、必ず還付を受けられたりするとは限りません。当初の計算内容と更正の請求の要件を確認してください。
個人の暗号資産の売却では、売却価額の5%を取得価額として所得を計算する取扱いがあります(所得税基本通達48の2-4・国税庁FAQ 2-7)。税率が5%になる制度ではなく、取得価額の計算方法の一つです。まずは年間取引報告書や銀行口座の記録などで実際の取得価額を確認し、5%で計算した場合と比べて判断しましょう。使う場合は、対象の売却と計算の内容を記録しておくことが大切です。損益計算の全体の流れは仮想通貨の税金の計算方法にまとめています。
古い取引や閉鎖した取引所の履歴が混ざり、計算が難しい方は、暗号資産の損益計算のご依頼もご検討ください。
根拠資料:所得税基本通達48の2-4/国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」2-4〜2-7/国税庁 No.2260 所得税の税率
この記事は個人の所得税・住民税に関する一般的な説明です。制度の内容は所得税基本通達48の2-4と国税庁FAQ(令和7年12月改訂)などにもとづき、2026年9月30日に確認しました。ご自身の状況にあわせて確認してください。
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