仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2026年09月20日
仮想通貨/暗号資産
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
「仮想通貨で利益が出たけれど、税金がいくらになるのか自分で計算できない」——確定申告の前に必ず出るご相談です。暗号資産(仮想通貨)の税金の計算は、①仮想通貨の所得を出す → ②他の所得と合算して課税所得を出す → ③速算表で税額を出す、この3ステップに分解すれば必ず最後までたどり着けます。
この記事では、年間の取引から所得金額を出し、給与と合算して納税額を確定させるまでを、ひとつの数値例で通して解説します。税率表や税金の全体像は仮想通貨の税金ガイドをご覧ください。
目次
計算の順番と使う式は次のとおりです。
| ステップ | 計算すること | 式 |
|---|---|---|
| ① 仮想通貨の所得を出す | 1年間の取引から雑所得の金額を確定させる | 収入金額 - 譲渡原価 - 必要経費 |
| ② 課税所得を出す | 給与など他の所得と合算し、所得控除を引く | (仮想通貨の所得+他の所得)- 所得控除 |
| ③ 税額を出す | 速算表を使って所得税・住民税を計算する | 課税所得 × 税率 - 控除額 |
ポイントは、仮想通貨だけを取り出して税率を掛けても正しい税額は出ないことです。仮想通貨の所得は原則として雑所得(総合課税)で、給与などと合算した後の金額に累進税率がかかります。同じ100万円の利益でも、給与が400万円の方と1,000万円の方では税額が変わるのはこのためです。
所得税法35条2項二号は、雑所得の金額を「その年中の雑所得(公的年金等に係るものを除く。)に係る総収入金額から必要経費を控除した金額」と定めています(e-Gov法令検索「所得税法」(第35条第2項第2号))。ステップ①はこの条文をそのまま実行する作業です。
まず、その年に「収入金額」として拾うべき取引を洗い出します。日本円に換えた取引だけではありません。
課税されるタイミングの全体像は暗号資産の課税タイミングはいつ?にまとめています。DeFiを使っている方はDeFiの確定申告のやり方もあわせてご覧ください。
収入金額から引く「譲渡原価」は、売った数量に1単位あたりの取得価額を掛けて求めます。この1単位あたりの取得価額の出し方が、総平均法と移動平均法です。
所得税法施行令119条の2第1項一号は、総平均法を「その年一月一日において有していた種類を同じくする暗号資産の取得価額の総額とその年中に取得をした種類を同じくする暗号資産の取得価額の総額との合計額をこれらの暗号資産の総数量で除して計算した価額をその一単位当たりの取得価額とする方法」と定義しています(e-Gov法令検索「所得税法施行令」(第119条の2第1項第1号))。式にすると次のとおりです。
総平均法の単価 =(年始残高の取得価額 + 年中に取得した金額の合計)÷(年始残高の数量 + 年中に取得した数量の合計)
評価方法の届出をしていない方は、自動的に総平均法になります。所得税法施行令119条の5が、届出がない場合の法定評価方法を総平均法と定めているためです。ほとんどの個人の方はこちらに該当します。移動平均法との違いやどちらを選ぶべきかは総平均法・移動平均法の違いと選び方で詳しく解説しています。
なお、計算は銘柄(種類)ごとに行います。ビットコインとイーサリアムを混ぜて平均単価を出すことはできません。所得税法施行令119条の3も「暗号資産の評価の方法は、その種類ごとに選定しなければならない」としています。
譲渡原価のほかに、次のような費用を必要経費にできます。
線引きの考え方は仮想通貨の必要経費で解説しています。生活費と混ざるものは、区分の根拠を説明できる範囲にとどめるのが安全です。
ビットコインだけを取引した方の例で、ステップ①を実際に計算してみましょう。
前提
| 項目 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|
| 年始残高(前年末の持ち越し) | 0.5 BTC | 2,500,000円 |
| 年中の購入 | 1.0 BTC | 8,000,000円 |
| 年中の売却 | 0.8 BTC | 8,800,000円 |
| 売買手数料(年間合計) | — | 20,000円 |
1単位あたりの取得価額(総平均法)
(2,500,000円 + 8,000,000円)÷(0.5 BTC + 1.0 BTC)= 10,500,000円 ÷ 1.5 BTC = 7,000,000円/BTC
譲渡原価
7,000,000円 × 0.8 BTC = 5,600,000円
雑所得の金額
8,800,000円(収入金額)- 5,600,000円(譲渡原価)- 20,000円(手数料)= 3,180,000円
年末に残る0.7 BTC(1.5 − 0.8)の評価額は 7,000,000円 × 0.7 = 4,900,000円で、これが翌年の「年始残高」になります。この引き継ぎを忘れると翌年の単価が狂うので、計算書やツールの出力は必ず保管してください。
複数の銘柄を取引している場合は、この計算を銘柄ごとに行い、最後に所得金額を合計します。取得価額が分からない銘柄がある場合は取得価額がわからないときの税金計算を、取引履歴が手に入らない場合は取引履歴が出ない!消えた!?をご覧ください。
仮想通貨の所得が出たら、給与など他の所得と合算します。会社員の方は源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」をそのまま使えば、給与所得控除を自分で計算する必要はありません。
先ほどの例に、給与所得控除後の金額 4,360,000円、所得控除の合計 1,540,000円(基礎控除・社会保険料控除などの合計)を加えて続けます。
4,360,000円(給与所得)+ 3,180,000円(仮想通貨の雑所得)= 7,540,000円(合計所得金額)
7,540,000円 - 1,540,000円(所得控除)= 6,000,000円(課税所得金額)
課税所得金額は1,000円未満の端数を切り捨てます。所得控除の額は源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」が目安になりますが、医療費控除やふるさと納税など年末調整で処理していないものがあれば、確定申告で加えられます。
仮想通貨の損失は給与から引けません。 雑所得の損失は他の所得と損益通算できないため、この段階でマイナスを持ち込むことはできません(損益通算の可否)。
課税所得が出たら、国税庁の速算表を使います。所得税法89条が定める超過累進税率を、計算しやすく表にしたものです。
| 課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 1,000円 〜 1,949,000円 | 5% | 0円 |
| 1,950,000円 〜 3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
| 3,300,000円 〜 6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
| 6,950,000円 〜 8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
| 9,000,000円 〜 17,999,000円 | 33% | 1,536,000円 |
| 18,000,000円 〜 39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
| 40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典: 国税庁 No.2260 所得税の税率(令和7年4月1日現在法令等)
これに復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)と、住民税の所得割(標準税率で一律10%)が加わります。住民税には別途、均等割があります。
先ほどの課税所得6,000,000円で計算します。
所得税: 6,000,000円 × 20% - 427,500円 = 772,500円
復興特別所得税: 772,500円 × 2.1% = 16,222円(1円未満切捨て)
住民税(所得割): 6,000,000円 × 10% = 600,000円(概算。住民税は所得控除額が所得税と一部異なります)
「結局、仮想通貨の分でいくら増えたのか」を知りたい方が多いので、仮想通貨がなかった場合と比べてみます。
仮想通貨の所得がなければ課税所得は 4,360,000円 - 1,540,000円 = 2,820,000円。
所得税: 2,820,000円 × 10% - 97,500円 = 184,500円
差額を並べると次のとおりです。
| 仮想通貨あり | 仮想通貨なし | 増加額 | |
|---|---|---|---|
| 所得税 | 772,500円 | 184,500円 | 588,000円 |
| 復興特別所得税 | 16,222円 | 3,874円 | 12,348円 |
| 住民税(所得割) | 600,000円 | 282,000円 | 318,000円 |
| 合計 | — | — | 918,348円 |
仮想通貨の所得3,180,000円に対する負担は約918,000円、実効の負担率で約29%です。「雑所得は最大55%」という数字が独り歩きしがちですが、実際の負担率は給与を含めた課税所得の水準で決まります。年収別の税額イメージは年収別シミュレーションで確認できます。
なお、令和7年分からは基準所得金額が3億3,000万円を超える方について、超える部分の22.5%相当額が通常の所得税額を上回るときにその差額が加算される仕組みがあります(国税庁 No.2260)。大きな利確をした年は、この点も含めて確認が必要です。
移動平均法を使いたい場合は、届出が必要です。所得税法施行令119条の3第2項は、暗号資産を取得した場合には「同日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」評価方法を書面で納税地の所轄税務署長に届け出なければならない、と定めています。
つまりはじめてその銘柄を取得した年の申告期限までが期限で、後から「やっぱり移動平均法にしたい」と遡ることはできません。届出をしなければ総平均法です。実務では、ほとんどの方が総平均法のまま進めています。
もうひとつ、条文上の細かい点として、所得税法施行令119条の2第2項は、売買や交換の際に一時的に必要となる他の暗号資産の取得は「取得」に含まないとしています。他の通貨を買うために一度ステーブルコインを経由するようなケースが該当し得ますが、どこまでが「一時的」かは個別判断になるため、頻繁に経由している場合は専門家に確認するのが安全です。
ご相談で計算をお預かりして、直すことが多いのは次の5つです。
①年始残高を入れていない 前年も取引していた方が年始残高をゼロで計算すると、総平均単価が下がって所得が過大になります。
②利益を収入金額と混同している 収入金額は売却金額そのもので、利益ではありません。ここを取り違えると申告書の収入欄と所得欄の整合が取れなくなります。
③銘柄をまたいで平均している 計算は銘柄ごとです。BTCとETHを合算して単価を出すことはできません。
④仮想通貨同士の交換を計算に入れていない 日本円に換えていなくても、交換した時点で収入金額が発生します。取引所の「損益」表示だけを見ていると漏れます。
⑤仮想通貨の所得だけに税率を掛けている 給与と合算した後の課税所得に税率がかかります。仮想通貨の所得単体に20%などを掛けても正しい税額は出ません。
次のような場合は、手計算では現実的に追いつきません。
損益計算ツールの選び方は仮想通貨の損益計算とは?にまとめています。ツールでも組めない場合は、当事務所のような暗号資産専門の税理士に計算から任せる選択肢もあります。対応範囲と料金の目安は対応領域・料金のご案内をご覧ください。
令和8年度税制改正大綱では、暗号資産について所得区分を譲渡所得等(申告分離課税)へ変更し、税率を一律20%(所得税15%+住民税5%)、損失の3年間繰越控除を可能とする方向が示されています。実現すれば、本記事のステップ2(他の所得と合算)とステップ3(累進税率)の部分が大きく変わります。ただし対象は「特定暗号資産」「暗号資産取引業を行う者を経由する取引」等に限定される設計で、細目は政令・通達待ちです。
適用時期について2点だけ押さえてください。
株式や国内FXなど他の金融商品との損益通算は、現時点の大綱では認められていません。詳しくは令和8年度税制改正大綱より暗号資産税制の徹底解説、原文は財務省の大綱をご覧ください。
Q. 仮想通貨の利益に、そのまま20%を掛ければいいのではないですか? A. 現行制度では違います。仮想通貨の所得は原則として雑所得(総合課税)で、給与など他の所得と合算した後の課税所得に、5%から45%の超過累進税率がかかります。これに復興特別所得税2.1%と住民税10%が加わります。一律20%の申告分離課税は令和8年度税制改正で示された方向性で、2026年分・2027年分の申告には適用されません。
Q. 年の途中で計算して、納税資金を確保しておきたいのですが目安はありますか? A. その年の給与などの見込みと合わせて課税所得を試算し、速算表の該当する税率に住民税10%を足した率を掛けるのが簡便です。課税所得が330万円から695万円の帯なら、所得税20%+住民税10%で約30%が目安になります。年末に大きく利確する予定があるなら、税率帯が上がる可能性も見ておいてください。
Q. 損失が出た年でも計算して申告したほうがいいですか? A. 仮想通貨の損失は他の所得と損益通算できず、翌年以降への繰越もできないため、損失だけであれば申告による節税効果はありません。ただし同じ年に他の雑所得(副業の収入など)があれば、その中で相殺できます。また計算しておかないと翌年の年始残高が作れないので、申告するかどうかにかかわらず計算自体は毎年やっておくことをおすすめします。
Q. 年末に含み損のコインを売って買い戻せば、税金を減らせますか? A. その年に利益が出ているなら、売却して損失を確定させれば相殺されます。売った直後に買い戻す行為自体を禁じる規定はありませんが、買い戻すと総平均法の単価が動くため、思ったほど翌年以降の効果が出ないことがあります。年またぎの考え方は年またぎ取引で解説しています。
Q. 移動平均法のほうが有利になることはありますか? A. 生涯を通じた損益の合計は、どちらの方法でも最終的に一致します。差が出るのは「どの年に所得を計上するか」というタイミングです。値上がり局面では移動平均法のほうが所得を早めに認識する傾向がありますが、取引パターンによって逆転もします。届出は取得年の申告期限までで、一度選ぶと簡単には変えられないため、総平均法・移動平均法の違いと選び方を読んだうえで判断してください。
仮想通貨の税金の計算は、次の3ステップです。
最初につまずくのはステップ①の数字づくりで、税額計算そのものは表に当てはめるだけです。年始残高の引き継ぎと、銘柄ごとの計算。この2つを外さなければ、大きく間違えることはありません。
ご自身のケースで対応可能かどうかは料金表・見積相談で概算料金まで確認できます。税率や課税対象の全体像は仮想通貨の税金ガイド、申告手続きの進め方は仮想通貨の確定申告ガイドをご覧ください。
村上 裕一(むらかみ ゆういち)|公認会計士・税理士 村上裕一公認会計士事務所 所長。暗号資産(仮想通貨)の税務を専門とし、個人の確定申告から法人化・税務調査対応まで、暗号資産に特化した税務サポートを提供している。EY新日本有限責任監査法人出身。YouTube・Xで暗号資産の税金情報を発信中。
本記事は2026年8月時点の一般的な税務上の取扱い、所得税法・所得税法施行令の規定および国税庁の公表資料に基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。記載の税率・速算表は令和7年4月1日現在の法令等によるもので、税制改正により変更される場合があります。本記事の計算例は概算であり、個別のご事情により実際の税額は異なります。