仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2025年06月17日
仮想通貨/暗号資産
この記事の監修者
村上裕一公認会計事務所/代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
仮想通貨で利益が出たら、日本では雑所得として課税対象になります。しかし、「マレーシアなら非課税らしい!」という噂を聞いて、移住や資産移転を検討している方も多いのではないでしょうか?
この記事では、マレーシアにおける仮想通貨の税制と、そのメリット・注意点についてわかりやすく解説します。
2025年現在、マレーシアでは個人による仮想通貨のキャピタルゲイン(売却益)には課税されていません。つまり、仮想通貨を売却して利益を得ても、原則として所得税がかからないのです。
これは、仮想通貨投資家にとっては、非常に魅力的な情報ではないでしょうか。
マレーシアは、仮想通貨の税金以外にも、全体的に税金が低いことで有名です。
日本とマレーシアの税金を比較すると以下の通りです(2025年6月時点)。
項目 |
日本 |
マレーシア |
所得税 |
最大45%(超過累進課税) |
最大30%(超過累進課税) |
住民税 |
一律10%(都道府県民税+市町村民税) |
なし |
消費税 |
10%(すべての商品・サービスに適用) |
6%(SST:一部の物品・サービスのみ対象) |
仮想通貨の税金 |
雑所得として総合課税最大55%(住民税含む)※損益通算不可・繰越控除不可 |
原則非課税(個人の投資による売却益)※事業扱いは課税対象 |
相続税 |
最大55%(基礎控除あり) |
なし |
贈与税 |
最大55%(年間110万円まで非課税) |
なし |
マレーシアにおいても、所得税は日本と同じ超過累進課税を用いられていますが、最大税率が30%(日本は最大税率45%)と低い上に、200万リンギット(日本円でおおよそ6,000万円~7,000万円)以上が最大税率の対象となっています。日本は課税所得4,000万円以上が最大税率45%の適用対象であるために、マレーシアの方が税率も上限も高いことから所得税は低いこととなります。
さらに、住民税はなく、仮想通貨などのキャピタルゲインにかかる税金はゼロであるために、日本に比べると相対的に税金を抑えることができるでしょう。
マレーシアに移住すれば仮想通貨の税金がゼロになるからラッキー、と思われたかもしれませんが、移住には注意するべき落とし穴が何点かあります。
①日本の居住者判定
まずは、日本の居住者の判定です。
マレーシアに滞在したとしても、日本の居住者と認められてしまえば、日本に納税する義務を負うため、結果的に高い税金を支払わなければならない可能性があります。
日本の居住者の判定としては、滞在日数、家族の所在地、職業、資産の所在地、生活の本拠地などの点で総合的に判断され、「実質的にどこが本拠地になっているか」という点で調べられることとなります。
詳細は下記の記事をご参考ください。
「仮想通貨の海外移住 〜税法上の非居住者になるための要件とは〜」
②出国税
続いて、出国税です。これは、国外転出時移転課税のことであり、国外に資産を持ち出す際には、含み益にかかる税金を払ったうえで出国しなければならない、というルールです。
仮想通貨(法律上は暗号資産)については、現在は出国税の対象外となっています(2025年6月時点)。
ですが、今後は仮想通貨に出国税が課される可能性があります。
出国時には、仮想通貨に出国税が課されるかどうかを事前に調べておき、出国税が課されるのであれば、仮想通貨の含み益に対する税金を支払わなければなりません。
③相続税
相続税については、日本の税法が特別なルールになっており、被相続人、相続人ともに10年以上海外に移住していることを満たさない限り、日本に納税しなければなりません。
そのため、本人は海外に移住したものの、相続人となる子どもが日本にいるままであれば、日本の相続税が課されることとなります。
マレーシアは、仮想通貨だけでなく、全体的な税率が日本に比べると低い傾向にあります。
マレーシアの税金の優位性は下記のとおりです。
評価軸 |
マレーシアの優位性 |
所得税負担 |
✅ 最大30%、かつ住民税なし ✅最大税率30%の適用は6,000万円~7,000万円以上(200万リンギット以上) |
仮想通貨の税制 |
✅ 非課税 |
相続・贈与 |
✅ 完全非課税(制度自体がない) |
ただし、海外移住の際には、税法上の居住者の要件や出国税などを事前に検討しておく必要があり、事前に専門家に相談するのが良いでしょう。
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