仮想通貨ステーキング報酬の税金はどうなる?課税タイミングと計算方法を徹底解説!
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2026年10月13日
仮想通貨/暗号資産
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
「投資詐欺にあって、お金はほとんど戻ってきません。その投資で出ていた利益には、毎年税金も払っていました。せめて税金は返してもらえないでしょうか」というご相談をいただくことがあります。
詐欺の被害を受けたという理由だけで、納めた税金が戻るわけではありません。ただし、当初の申告に誤りがあった場合や、課税された収入が回収できなくなった場合、契約が取り消された場合などで要件を満たせば、更正の請求で税金が戻ることがあります。期限は短く、証明すべきことも多いのが注意点です。実際に、投資詐欺の被害者2人が過去に払った税金の返還を求めた裁判では、2022年に最高裁で負けが確定しています。
この記事では、この判決をもとに、なぜ認められなかったのか、税金を取り戻す制度はどんなものか、どんな点に注意すべきかを整理します。取引所の流出や破綻で資産を失った場合は取引所の流出・破綻と税金、税金の全体像は仮想通貨の税金まとめをご覧ください。
払い過ぎた所得税は、更正の請求で取り戻せるかを検討します。理由によって期限が違います。
| 請求の理由 | どんなときか | 期限 |
|---|---|---|
| 当初の申告の誤り(国税通則法23条1項) | そもそも申告した利益が誤っていたとき | 原則として法定申告期限から5年以内 |
| 課税された収入の回収不能(所得税法64条1項・152条) | 申告した収入(利益)が、後から回収できなくなったとき | 回収できなくなった事実が生じた日の翌日から2か月以内 |
| 契約の取消し・判決など(国税通則法23条2項、所得税法152条・同施行令274条) | 契約が取り消されたとき、判決で計算のもとになった事実が違うと確定したときなど | 取消しの効力が生じた日や判決が確定した日などの翌日から2か月以内 |
この記事で主に取り上げるのは、下の2つ(後から起きた事情による特例)です。どちらも被害に気づいた日から2か月ではありません。法律が決めた事実が起きた日の翌日から2か月です。
なお、だまし取られた元本そのものは、雑損控除で差し引くことはできません。雑損控除(所得税法72条)の対象は災害・盗難・横領による損失で、詐欺による損失は対象外です(国税庁 質疑応答事例「詐欺による損失」)。
今回取り上げるのは、次の3つの裁判例(判決2件・決定1件)です。いずれも国税庁の「税務訴訟資料」で公開されています。
中身を詳しく判断したのは地裁と高裁で、最高裁は上告を退けた決定です。
アメリカの会社が日本で販売していた金融商品です。日本に支店があり、第二種金融商品取引業の登録も受けていました。「米国の診療報酬債権を買って回収し、その利益の一部を配当する」という商品でした。判決では、会社名は「A」と匿名になっています。
判決によると、この会社は遅くとも2011年以降、集めたお金を事業に使わず、ほかの顧客への支払いに流用するなどしていました。ポンジ・スキームに似た構図です。ただし、最初からずっと事業の実態がなかったとまでは認定されていません。2013年に登録を取り消され、被害を受けた日本人は約8,700人にのぼりました。
被害者への分配は、判決が引用した2020年12月の弁護団通信で、失った額の4%程度になる見込みとされていました。100万円を失った人なら、戻るのは4万円程度という計算です。地裁判決の時点では、いずれの分配手続もまだ実施されていないと認定されています。
原告の2人は、2005年分から2012年分まで、この商品で出た利益を雑所得として確定申告や修正申告をし、税金を納めていました(1人は2008年分に更正処分も受けています)。そして2018年6月1日、「詐欺事件の民事裁判が終わった」として、雑所得を0円にする更正の請求をしました。返還を求めた税金は、1人が約291万円、もう1人が約142万円です。
税務署は認めず、再調査の請求と審査請求も棄却されました。その後の裁判でも、地裁・高裁で負け、最高裁で確定しています。
所得税法64条1項は、雑所得などの計算のもとになった収入が回収できなくなった場合に、その年分の所得をさかのぼって減らせる制度です(事業所得などは対象外で、別の規定によります)。対象は税金がかかった収入です。投資した元本を失ったことや、いったん受け取った利益を再投資して失ったことが、そのまま対象になるわけではありません。
地裁は、債権が法律上消滅した場合などと、債権は残っていても回収が事実上できない場合を分けたうえで、後者について次の基準を示しました。
社会通念に照らして債権の回収が困難となった程度では足りず、債務者の倒産や失踪等の事情が生じ、その全額の回収の見込みがないことが客観的に確実になったことを要する
単に「満額は戻らなさそう」というだけでは足りません。SNSで「あれは詐欺だ」と言われている、被害者がみんな大損している、というだけでも足りないということです。
判決は、次の点を挙げて、回収できないことが客観的に確実になったとは認めませんでした。
この事件は、2か月の期限を過ぎたことを理由に負けた事件ではありません。
なお、税務署は「裁判で契約が取り消されたことを証明する書類ではない」として請求を退けており、裁判所はこの理由の示し方に違法はないとしました。ただ、「契約取消しの判決がなければ必ず還付されない」と判断したわけではありません。
ここからは、この事件の2人の話ではなく、一般的な制度の説明です。
さきほどの所得税法64条の制度です。回収できなくなった事実が生じた日の翌日から2か月以内に更正の請求をします(所得税法152条)。回収できないことが客観的に確実になったことを、自分で証明する必要があります。
税金の計算のもとになった契約が取り消された場合や、税金の計算のもとになった事実が判決で違うと確定した場合にも、更正の請求ができる特例があります(国税通則法23条2項、所得税法152条・同施行令274条)。こちらも、取消しの効力が生じた日や判決が確定した日などの翌日から2か月以内です。
日本の民法では、詐欺による意思表示は、要件を満たせば取り消すことができます(民法96条1項)。有効に取り消すと、その契約は初めから無効だったものとして扱われます(民法121条)。取消しは原則として相手に意思を伝えて行うもので、必ず裁判が必要なわけではありません。取消しの通知が相手に届いた時点で効力が生じるのが原則なので、判決を待っている間に期限が過ぎてしまうおそれもあります。
ただし、取り消したからといって税金が自動的に戻るわけではありません。税金が戻るかどうかは、税務署の審査で別に判断されます。
| 特例 | 根拠条文 | 期限の起点 | 確認すること |
|---|---|---|---|
| 回収不能 | 所得税法64条1項・152条 | 回収できなくなった事実が生じた日の翌日 | 回収の見込みがないことが客観的に確実になったこと |
| 契約の取消し | 国税通則法23条2項3号・同施行令6条1項2号、所得税法152条・同施行令274条2号 | 取消しの効力が生じた日などの翌日 | 契約が有効に取り消され、その結果、税額が過大になったこと(受け取った利益の返還・精算の状況も確認) |
| 判決 | 国税通則法23条2項1号 | 判決が確定した日の翌日 | 税金の計算のもとになった事実が、判決で違うと確定したこと |
所得税法施行令274条による特例では、事業所得と、事業から生じた不動産所得・山林所得は対象から除かれます。どの規定を使うかと、所得の区分を確認する必要があります。
一番気をつけたいのは期限で、被害に気づいた日からではなく、回収不能や取消し、判決の確定といった事実が起きた日の翌日から2か月です。どの日が起点になるかは使う制度で変わるので、早めに専門家と確認するのが良いです。
詐欺業者から配当を受け取っていた場合、契約を取り消しても、その配当を返したり精算したりしておらず利益を持ったままなら、取消しだけで過去の所得がなくなるとは限りません。配当を使ってしまったことや、再投資して失ったことは、取消しに伴う返還・精算とは別の話です。課税された利益が実際にどうなったのかを整理する必要があります。
もっぱら税金を免れる目的で、当事者が馴れ合いで取った判決のように、実質的に客観的・合理的な根拠を欠く判決は、更正の請求の根拠になる判決に当たらないとした裁判例があります(東京高裁平成10年7月15日判決)。なお、相手が欠席して出た判決が、それだけで馴れ合いの判決になるわけではありません。
取消権は、追認できる時から5年間使わないとき、または行為の時から20年を過ぎたときに、時効によって消滅します(民法126条)。税金の2か月とは別の期限です。「追認できる時」は、契約日や被害に気づいた日とは限らないので、古い契約は民法改正前後の経過措置、海外の業者との契約はどの国の法律が適用されるかも関係するので、早めに弁護士に確認しましょう。
相手が適法に呼び出されても出てこず、書面などでも事実を争わない場合には、こちらが主張した事実を認めたものとして扱われることがあります(民事訴訟法159条3項)。ただし、公示送達による呼出しの場合には、この欠席による扱いは適用されません。また、欠席だけで請求が当然に認められるわけでもありません。相手の居場所が分からない場合や海外にいる場合は、手続きに時間がかかります。弁護士費用もかかるので、取り戻せる税金とのバランスも考えて判断しましょう。
今回の判決は、昔のアメリカの金融商品の事件で、暗号資産や海外FXを直接判断したものではありません。暗号資産や海外FXで「出金できない」被害にあった場合は、その利益が実際の取引によるものか、画面に表示されているだけか、すでに受け取ったものかを分けて考えます。最初の申告がそもそも誤っていたのか、本当にあった収入が後から回収できなくなったのかで、使う制度も変わります。
取引履歴、入出金の記録、業者とのやり取り、出金を断られた画面などは、必ず残しましょう。今回の事件でも、資料が残っていないことが、証明できなかった理由の一つでした。
契約の取消しや回収は弁護士、税金の手続きは税理士の分野です。2か月という短い期限があるので、両方に早めに相談しましょう。
A. 差し引けません。雑損控除の対象は災害・盗難・横領による損失で、詐欺による損失は対象外です(国税庁 質疑応答事例「詐欺による損失」、タックスアンサーNo.1110)。振り込め詐欺の損失を雑損控除の対象外とした裁決もあります(平成23年5月23日裁決)。ハッキングなどによる流出の扱いは取引所の流出・破綻と税金をご覧ください。
A. 出金したかどうかだけでは判断できません。暗号資産の売却や交換による利益は、銀行口座に出金していなくても所得の計算に入ります(国税庁は、原則として売却などをした暗号資産の引渡日の年分に計上するとしています)。一方、実在する取引も、受け取る権利もない単なる画面上の表示であれば、その表示だけで所得が生じるとはいえません。取引履歴・契約内容・入出金の状況を確認し、記録を残して税理士に相談しましょう。
A. 通常の更正の請求は、原則として法定申告期限から5年以内です。法律で決められた後発的な事情(回収不能や契約の取消しなど)が生じた場合は、この期間を過ぎた年分でも、特例による請求ができる場合があります。ただし、昔の申告の誤りや詐欺の被害に今気づいたというだけで、期限が延びるわけではありません。なお、通常の更正の請求の期間は、2011年12月2日より前に法定申告期限が来た年分では原則1年でした(国税通則法の平成23年改正)。
A. 取消しは原則として相手に意思を伝えて行うもので、必ず裁判が必要なわけではありません。ただし、税金の手続きでは取り消したことの証明が大切で、判決はその有力な証拠になります。
A. 契約を取り消しても、受け取った配当を返したり精算したりしておらず利益を持ったままなら、過去の税金が戻るとは限りません。課税された利益が実際にどうなったのかを整理したうえで判断します。
A. 契約の取消しや回収は弁護士、税金の手続きは税理士です。期限が短いので、両方に早めに相談するのが良いです。
村上 裕一(むらかみ ゆういち)|公認会計士・税理士
村上裕一公認会計士事務所 所長。暗号資産(仮想通貨)の税務を専門とし、個人の確定申告から法人化・税務調査対応まで、暗号資産に特化した税務サポートを提供している。EY新日本有限責任監査法人出身。YouTube・Xで暗号資産の税金情報を発信中。
本記事は2026年10月時点の所得税法(36条・64条・72条・152条)、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」、タックスアンサーNo.1110、所得税法施行令274条、国税通則法23条、国税通則法施行令6条、民法(96条・121条・126条)、民事訴訟法159条、国税庁 質疑応答事例「詐欺による損失」、名古屋地裁 令和4年2月24日判決(税務訴訟資料272号 順号13673)、名古屋高裁 令和4年7月28日判決(同 順号13742)、最高裁 令和4年12月14日決定(同 順号13790)、国税不服審判所 平成23年5月23日裁決に基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。判決の事件では会社名は匿名です。税金を取り戻す制度の説明は一般論で、この事件の原告に還付が認められたという意味ではありません。個別のご事情により実際の取扱いは異なります。