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村上裕一公認会計士事務所MURAKAMI CPA OFFICE 見積相談

2026年09月11日

仮想通貨/暗号資産

仮想通貨の含み益に対する税金の扱い:個人と法人の違いと対策

この記事の執筆・監修者

公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一

大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。

この記事のポイント

仮想通貨の含み益(保有中の値上がり益)に税金がかかるかどうかは、個人か法人かで異なります。個人は売却・交換・使用や報酬の受取りまで課税されません。法人は事業年度末に、活発な市場がある暗号資産を時価で評価し、評価損益を益金・損金に算入します。ただし、特定自己発行暗号資産は対象外で、特定譲渡制限付暗号資産は自社発行以外で時価法を選んだ場合だけ対象になります。

  • 個人は仮想通貨を持っているだけでは課税されず、売却・交換・使用した時点で原則として雑所得として課税される(ステーキング等の報酬は受取時に課税)。
  • 法人は期末に活発な市場がある暗号資産を時価評価し、評価益は益金・評価損は損金に算入する(翌期に洗い替え)。
  • 特定自己発行暗号資産は期末時価評価の対象外。特定譲渡制限付暗号資産は、自社発行以外で時価法を選んだ場合のみ対象(選んでいなければ原価法)。
  • 法人は期末前に、銘柄ごとの対象・除外の判定と取得原価の整理、納税資金の見込みが必要。
監修
村上裕一(公認会計士・税理士)
最終更新
2026-09-11
対象年度
令和8年度(2026年)
参照法令
国税庁 暗号資産FAQ(令和7年12月改訂)1-1〜1-3・1-7・2-2・2-4・3-1-3・3-1-4・3-1-6・3-1-9・3-1-11、法人税法61条、法人税法施行令118条の7〜118条の10

「仮想通貨が値上がりして含み益が出ているけれど、税金はいつかかるの?」

この記事は、仮想通貨を保有している個人の方と、法人で仮想通貨を保有・運用している方向けです。根拠確認日は2026年9月11日で、国税庁の暗号資産FAQ(令和7年12月改訂)と、令和8年4月1日現在の法令にもとづいています。

結論を先に書くと、含み益(持っているだけの値上がり益)の扱いは、個人と法人でまったく違います。

  • 個人:持っているだけでは課税されません。売却・交換・使用したときに、原則として雑所得として課税されます。
  • 法人:事業年度末に、活発な市場がある暗号資産を時価で評価し、評価益(含み益)も法人税の計算に入ります。ただし、自社発行の暗号資産や、譲渡制限付きで原価法により評価するものなど、時価評価の対象にならない暗号資産があります。

順番に見ていきましょう。

仮想通貨の含み益とは

含み益とは、持っている資産の時価が取得価額を上回っている状態の、その差額のことです。仮想通貨なら、いま持っているコインの時価と買ったときの価額の差です。まだ売っていないので、手元に日本円は入っていません。この「まだ売っていない利益」に税金がかかるかどうかが、個人と法人で分かれます。

個人が仮想通貨を保有する場合:含み益には課税されない

個人の場合、仮想通貨を持っているだけでは課税されません。課税されるのは、売却したとき、別の仮想通貨と交換したとき、商品の購入に使ったときなど、暗号資産を手放して利益が確定したときです(国税庁FAQ 1-1〜1-3)。このときの利益は、所得税法上、原則として雑所得(その他雑所得)に区分され、給与など他の所得と合算して総合課税で申告します(FAQ 2-2)。

つまり、含み益が1,000万円あっても、その年に売却などをしていなければ、その1,000万円に対する所得税・住民税はかかりません。売却した年に、売却額と取得価額(同じ銘柄を総平均法または移動平均法で平均した単価)の差が所得になります(FAQ 2-4)。

注意したいのは、ステーキングやレンディングの報酬、マイニングで受け取った暗号資産です。これらは売却していなくても、受け取った時点の時価が収入になります(FAQ 1-7)。「まだ売っていないから税金はかからない」と思っていると、報酬の分だけ申告漏れになりやすい点は知っておきましょう。詳しくはステーキング報酬の税金で解説しています。

法人が仮想通貨を保有する場合:期末に時価評価し、評価益に課税される

法人は違います。法人が事業年度末に持っている暗号資産のうち、活発な市場がある暗号資産(市場暗号資産)は、期末の時価で評価し、評価額と帳簿価額の差額(評価損益)を、その事業年度の益金または損金に算入します(法人税法61条2項、国税庁FAQ 3-1-3)。売っていなくても、値上がり分が課税所得に入り、値下がり分は損金になります。この評価損益は翌事業年度に洗い替えます。

「活発な市場がある」かどうかは、継続的に売買価格が公表されていること、公表されるだけの十分な数量と頻度で取引されていること、その価格が自社以外の者によって公表されている(または自社の計算による取引で作られた価格でない)ことで判断します(FAQ 3-1-4)。ビットコインやイーサリアムのように取引所に上場して価格が公表されている暗号資産は、通常この要件を満たします。

時価は、期末日の最終の売買価格に数量を掛けて計算します(FAQ 3-1-3)。ステーキングのためにロックアップして動かせない状態でも、自社の計算で保有しているものは時価評価の対象になります(FAQ 3-1-6)。

時価評価の対象にならない暗号資産と、評価方法を選べる暗号資産

活発な市場がある暗号資産でも、次のものは扱いが変わります(法人税法61条2項、FAQ 3-1-4)。

  • 特定自己発行暗号資産:自社が発行し、発行時から継続して保有していて、発行時から継続して、譲渡についての制限その他の条件として政令で定める要件を満たすもの(例えば、期間を定めて他者に移転できないようにする技術的措置で、自社の役員等や関係者だけでは解除できないもの)。これは期末時価評価の対象になりません(FAQ 3-1-9)
  • 特定譲渡制限付暗号資産:譲渡制限などの条件が付され、その旨を暗号資産交換業者を通じて公表するための所定の手続を行っているもの。自社発行のものは対象になりません。自社発行でないものは、時価法と原価法のうち法人が選んだ方法で評価します。時価法を選んだ場合は時価評価の対象になり、選んでいなければ原価法(時価評価しない)になります(FAQ 3-1-11)

自社トークンを発行している会社や、ロック条件付きでトークンを受け取った会社は、この除外に当たるかどうかで期末の税負担が大きく変わります。要件は細かいので、該当しそうな場合は必ず個別に確認してください。期末評価の手順と判断基準は法人の期末評価と時価評価課税のポイントにまとめています。

個人と法人の違いを一覧で

表が画面に収まらない場合は、横にスクロールしてご覧ください。

項目 個人 法人
含み益(持っているだけ) 課税されない 活発な市場がある暗号資産は期末に時価評価し、評価益が益金になる
含み損(保有中の値下がりによる評価損) 計上しない 時価評価の対象なら期末の評価損が損金になる
課税されるタイミング 売却・交換・使用・報酬の受取り 期末(時価評価)と売却等
所得の区分・税金 原則として雑所得(総合課税・所得税5〜45%+住民税10%、復興特別所得税を除く) 法人税等(他の事業の損益と通算)
評価方法の選択 総平均法・移動平均法(届出がなければ総平均法) 市場暗号資産は時価法。特定譲渡制限付(自社発行以外)は時価法・原価法の選択、未選択は原価法
時価評価の対象外 — 特定自己発行暗号資産/特定譲渡制限付暗号資産(自社発行以外は時価法を選んだ場合のみ対象。選んでいなければ原価法)/活発な市場がないもの

法人で仮想通貨を持つときに確認すること

  • 決算期末の保有銘柄と数量:期末日時点で何をいくら持っているかを、取引所・ウォレットごとに把握しておきます。
  • 銘柄ごとに「活発な市場があるか」:上場していて価格が公表されている銘柄は原則対象です。自社トークンや譲渡制限付きのトークンは除外に当たるかを確認します。
  • 帳簿価額(取得原価):期末評価は評価額と帳簿価額の差額で計算するので、取得原価の算定(移動平均法・総平均法)が前提になります。
  • 翌期の洗い替え:評価損益は翌事業年度に戻す処理をします。前期の評価と当期の評価が両方必要です。
  • 納税資金:売っていなくても評価益に法人税がかかるため、期末前に納税資金の見込みを立てておきます。

「税金対策」として長期保有すれば税率が下がる、といった仕組みは法人の暗号資産にはありません。法人にできるのは、対象・除外の判定を正しく行い、期末評価を漏れなく計算し、納税資金を見込んでおくことです。

税制改正について

令和8年度税制改正で、個人の特定暗号資産の譲渡所得等について申告分離課税などの制度が創設されました(法律は2026年3月に公布)。適用開始の時期や対象の詳しい条件は、この記事では扱いません。最新の状況は暗号資産税制の年次レポートをご覧ください。この記事の法人の期末時価評価の説明は、確認した範囲の現行法令(法人税法61条・国税庁FAQ令和7年12月改訂)にもとづいています。

法人の期末評価や損益計算を依頼したい方へ

法人の暗号資産は、個人と違って「売っていなくても期末に課税される」ため、期末前に対象・除外の判定と時価評価の準備が必要です。顧問税理士がいる会社で、暗号資産の損益計算・期末評価の部分だけを任せたい場合は、法人向け暗号資産の損益計算をご覧ください。計算結果は御社の顧問税理士がそのまま使える仕訳・資料の形でお渡しします。顧問ごと任せたい場合は、損益計算・期末評価込みの法人税務顧問をご覧ください。

個人の方で、売却やステーキング報酬の計算を依頼したい場合は、暗号資産の損益計算サービスをご覧ください。

よくある質問

Q. 個人で含み益が大きいのですが、確定申告は必要ですか?
A. 売却・交換・使用や報酬の受取りがなければ、含み益だけでは所得は生じないので、その分の申告はありません。ステーキング報酬などを受け取っている場合は、受取時の時価が収入になります。

Q. 法人で持っている仮想通貨が値下がりしました。損は落とせますか?
A. 活発な市場がある暗号資産で時価評価の対象なら、期末の評価損が損金になります(翌期に洗い替えます)。時価評価の対象にならず原価法で評価する暗号資産は、期末の値下がりだけを理由とする評価損は計上しません。

Q. 自社で発行したトークンも期末に時価評価しますか?
A. 発行時から継続して保有し、発行時から継続して政令で定める譲渡制限などの条件(関係者だけでは解除できない技術的措置など)が付されていれば「特定自己発行暗号資産」として時価評価の対象外です。要件を満たさない場合は、活発な市場があれば時価評価の対象になります(FAQ 3-1-9)。

まとめ

個人は、仮想通貨を持っているだけでは課税されず、売却などで利益が確定したときに原則として雑所得として課税されます(報酬の受取りは受取時に課税)。法人は、活発な市場がある暗号資産を期末に時価評価し、評価損益を益金・損金に算入します。特定自己発行暗号資産は対象外で、特定譲渡制限付暗号資産は自社発行以外で時価法を選んだ場合だけ対象になります。法人で暗号資産を持つなら、期末前に対象・除外の判定と取得原価の整理を済ませておきましょう。

この記事は一般的な説明です。制度の内容は令和8年4月1日現在の法令等と国税庁FAQ(令和7年12月改訂)にもとづき、2026年9月11日に確認しました。個別のご事情により取扱いが異なる場合があります。

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