仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2026年07月17日
仮想通貨/暗号資産
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
結論から先にお伝えします。
① 仮想通貨の損失そのものに税金はかかりません。ただし、同じ年の「雑所得(総合課税)」の中では利益と相殺(内部通算)できる場合があります。
② 給与所得や株式の譲渡損益とは相殺できず、損失を翌年に繰り越すこともできません(現行制度)。
③ それでも、「損したから申告は関係ない」と何もしないのは一番もったいないパターンです。別のコインの利益や副業収入と相殺できるケースや、計算してみたら実は利益だったケースが実務では珍しくありません。この記事では、仮想通貨(暗号資産)の損失をめぐる税金のルールを、損益通算・繰り越し・申告の要否の順に整理します。税金の全体像は仮想通貨の税金まとめ、申告手続きの流れは仮想通貨の確定申告のやり方をあわせてご覧ください。
目次
かかりません。税金の対象になるのは、売却・交換・決済などで確定した「利益」です。年間トータルで損失なら、その損失自体に課税されることはありません。
ここで注意したいのが、「損失かどうか」は感覚ではなく計算で決まるという点です。仮想通貨の損益は、
損益 = 売却・使用した時の価額 − 取得価額 − 必要経費
で計算し、取得価額は総平均法(届出をすれば移動平均法)で求めます。たとえば「年末の暴落で含み損を抱えている」だけなら損失は確定していませんし、逆に「年の途中でコイン同士を交換していた」場合、日本円にしていなくてもその時点で利益が確定していることがあります。「損しているつもりだったのに、計算したら利益が出ていた」というのは、実務で本当によくあるケースです。
まずは年間の損益計算をして、自分がプラスなのかマイナスなのかを数字で確認するところがスタートになります。
できる範囲とできない範囲がはっきり分かれています。ここが一番誤解の多いポイントです。
仮想通貨の売買損益は、個人の場合、原則として雑所得(総合課税)に区分されます。そのため、同じ年の総合課税の雑所得の中であれば、損失と利益を相殺(内部通算)できます。
なお、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超え、帳簿書類の保存がある場合などは事業所得に区分される可能性があります。以下は、一般的な個人投資家(雑所得に該当するケース)を前提に説明します。
たとえば、あるコインで100万円の損失、副業で60万円の雑所得がある場合、相殺後の雑所得は0円(副業分60万円が消える)となり、その分の税負担が下がる可能性があります。
一方で、次のものとは相殺できません。
| 相手の所得 | 相殺の可否 |
|---|---|
| 同じ年の総合課税の雑所得(別コインの利益・海外FX・副業収入等) | できる |
| 給与所得 | できない |
| 事業所得 | できない |
| 株式・投資信託の譲渡損益(申告分離課税) | できない |
| 国内FX(先物取引に係る雑所得等・申告分離課税) | できない |
株式や国内FXは「申告分離課税」という別枠で課税されるため、同じ「投資の損」でも仮想通貨の損失とは合算できません。なお、同じFXでも海外FXは総合課税の雑所得のため、仮想通貨の損益と相殺できます。「仮想通貨で損したから、給与の税金が戻ってくる」ということも原則ありませんので、ご注意ください。
現行制度では、翌年以降に繰り越すことはできません。
上場株式や国内FXであれば、確定申告を続けることで損失を3年間繰り越し、翌年以降の利益と相殺できます。しかし仮想通貨の損失は雑所得のため、この繰越控除の対象外です。今年100万円の損失を出しても、来年200万円の利益が出れば、来年は200万円まるごとに課税されるのが現行のルールです。
| 仮想通貨(現行) | 上場株式・国内FX | |
|---|---|---|
| 課税方式 | 総合課税(雑所得) | 申告分離課税(一律20.315%) |
| 損失の繰り越し | できない | 3年間できる |
だからこそ、後述するとおり「同じ年の中で損失をどう活かすか」が仮想通貨では特に重要になります。
令和8年度税制改正大綱(2025年12月)で、金融商品取引法等の改正を前提に、「特定暗号資産」の譲渡益に20.315%の申告分離課税を導入し、損失の3年間の繰越控除を認める方針が示され、関連する税制の法律は2026年3月に成立しています。適用は、金融商品取引法等の改正法の施行日の属する年の翌年1月1日以後の特定暗号資産の譲渡等が対象とされており、2028年以降になる見込みです。
ただし、次の2点は誤解のないようにしてください。
「もうすぐ繰り越せるようになるから今年は放置でいい」という判断は成り立たない点に注意が必要です。
「損失しかないなら申告しなくていいのでは?」——たしかに、給与所得者で、仮想通貨の損失しかなく他の(総合課税の)雑所得もない場合など、そもそも申告義務がないケースはあります。次に当てはまる方は、確定申告による相殺の余地を確認しましょう。
なお、「取得価額の記録を残す」「実は利益が出ていないか確かめる」といった話は、確定申告そのものというより年間の損益計算の領域です。申告義務がない場合でも、損した年こそ年間の損益計算と資料の保存だけはしておくことをおすすめします。コイン同士の交換や決済で気づかないうちに利益が確定していることがあるためです。
損失を翌年に繰り越せない以上、対策は年内(12月31日まで)が勝負です。
ただし、利確・損出しには売却後の価格変動リスクや取引手数料、買い戻した場合の取得価額への影響もあります。税額だけでなく、投資判断としての損益も含めて検討してください。
いずれも「年が明けてからではできない」対策です。秋〜12月のうちに一度、年間損益の試算をしておくことをおすすめします。
Q. 損失だけの年も確定申告は必要ですか?
A. 給与所得者で、仮想通貨の損失しかなく他の(総合課税の)雑所得もない場合は、申告義務がないケースが多いです。ただし、同じ年に他の雑所得があれば相殺で税額が下がる可能性があるほか、損益計算の記録は翌年以降の取得価額の資料として重要です。医療費控除などで申告する場合の取扱いも含め、迷ったら専門家に確認してください。
Q. 去年の損失を今年の利益と相殺できますか?
A. できません。現行制度では仮想通貨の損失は翌年に繰り越せないため、相殺できるのは同じ年の中だけです。改正で導入される繰越控除も「特定暗号資産」限定・2028年以降見込みで、過去の損失には適用されません。
Q. 仮想通貨の損失を給与所得と相殺して、源泉徴収された税金を取り戻せますか?
A. 原則できません。仮想通貨の損失は雑所得内の相殺に限られ、給与所得とは損益通算できないため、還付にはつながりません。
Q. 海外取引所の損失も通算できますか?
A. 日本の居住者であれば、海外取引所の取引も国内と同様に損益計算に含めます。同じ年の雑所得内であれば、海外取引所で出た損失も内部通算の対象です。ただし履歴の取得・円換算が煩雑になりやすいため、早めのデータ確保をおすすめします。
Q. 損失を証明する資料は何を残せばいいですか?
A. 各取引所の年間取引報告書・取引履歴(CSV)、ウォレットの入出金記録、損益計算の結果(計算書)が基本です。取引所の閉鎖などに備え、履歴は毎年ダウンロードして保管しておくと安心です。DeFiなど履歴が自動で取れない取引は、日付・内容の簡単なメモを残しておくと後の計算が楽になります。
税金の全体像は仮想通貨の税金まとめ、申告手続きは仮想通貨の確定申告のやり方で詳しく解説しています。