仮想通貨を少しずつ利確する際の税金の計算方法とメリット・デメリット
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
2026年08月14日
仮想通貨/暗号資産
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。
「仮想通貨の利益があるのに確定申告を忘れていた」「過去の申告に漏れがあった」——気づいた瞬間は血の気が引きますが、今からでも立て直せます。そして、大事なのは、早く動くほど確実に安く済みます。ペナルティの税率は「いつ申告するか」で段階的に上がる仕組みになっており、税務署から連絡が来る前の自主申告がいちばん軽いからです。
この記事では、申告漏れ・無申告のペナルティ(無申告加算税・延滞税・重加算税)の税率と計算例、期限後申告の具体的な手順、税務署から「お尋ね」が来た場合の対応までを解説します。そもそも税務署にどう把握されるのかは仮想通貨の税金はバレない?税務署に把握される仕組みをご覧ください。
目次
先に結論です。税務署から調査の連絡が来る前に、自分から期限後申告(または修正申告)をしてください。理由は、ペナルティの中心である加算税は、申告のタイミングで税率が変わるからです。
| 申告したタイミング | 無申告加算税の税率 |
|---|---|
| 税務署から調査の通知が来る前に自主申告 | 5% |
| 調査の通知後〜調査による決定を予知する前 | 10%(納税額50万円超の部分15%・300万円超の部分25%) |
| 調査を受けてから | 15%(50万円超の部分20%・300万円超の部分30%) |
※調査通知前の自主申告は原則5%ですが、法定申告期限から1か月以内の自主申告で期限内に納付済みなど一定の要件を満たす場合は、無申告加算税が課されないことがあります。※300万円超の区分(25%・30%)は令和5年分以後の申告に適用されます(令和4年分以前は50万円超までの区分で判定します)。
同じ申告漏れでも、自分から動けば原則5%、調査で指摘されれば通常の区分で最大30%(過去にも無申告があった場合や帳簿の不提示等では、さらに加重されることがあります)。悪質な仮装・隠蔽があると判断されれば、無申告加算税に代えて重加算税40%です。「気づいたのに放置する」ことが、金額面でいちばん損な選択になります。
なお、期限後申告になっても確定申告そのものの計算方法は通常と同じです。全体の流れは仮想通貨の確定申告ガイドを参照してください。
かかり得るペナルティを整理します。本税(本来納めるべき所得税・住民税)に上乗せされるものです。
| ペナルティ | 対象 | 税率 |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 期限までに申告しなかった | 上表のとおり5%〜30% |
| 過少申告加算税 | 申告したが金額が少なかった | 調査通知前の自主的な修正申告なら課されない。調査通知後〜更正等を予知する前は5%(一定額超の部分10%)、調査を受けてからは10%(同15%) |
| 重加算税 | 仮装・隠蔽があった | 追加本税の35%(過少申告加算税に代えて)/40%(無申告加算税に代えて) |
| 延滞税 | 納付が遅れた期間の利息 | 法定の割合で日割り計算(納期限から2か月以内は低い割合、それ以降は高い割合。割合は年度により変動) |
2点補足します。第一に、延滞税は申告した日ではなく本来の納期限から日割りで積み上がります。放置期間が長いほど確実に増える部分です。第二に、重加算税の「仮装・隠蔽」は、単なる申告忘れでは通常該当しませんが、取引履歴の廃棄や意図的な所得隠しと見られる行為があると一気に40%の世界になります。証拠が残る仮想通貨で隠すことは非常に危険です。
では具体的に計算をシミュレーションしてみましょう。会社員の方が、昨年分の仮想通貨の利益500万円を申告し忘れ、追加で納める所得税が150万円、住民税が50万円だったと仮定します(税額は給与などの他の所得で変わるため、仮の前提です)。加算税は国税である所得税を基礎に計算され、住民税には掛かりません。
| 申告のタイミング | 無申告加算税 | 合計負担の目安 |
|---|---|---|
| 調査通知前に自主申告 | 所得税150万円 × 5% = 7.5万円 | 本税200万円+7.5万円+延滞税 |
| 調査を受けてから | 50万円×15%+100万円×20% = 27.5万円 | 本税200万円+27.5万円+延滞税 |
| 仮装・隠蔽を伴う無申告と認定 | 所得税150万円 × 40% = 60万円 | 本税200万円+60万円+延滞税 |
自主申告と調査後では、この例だけで20万円の差です。これに延滞税が放置期間分だけ加わります。「いつかやろう」の1年に、明確な値段がつくということです。
実際の進め方です。特別な手続きではなく、通常の確定申告を遅れて出すイメージです。
なお、所得税の期限後申告の内容は住民税にも反映されます。後日、市区町村から住民税の通知(追加納付)が届き、国民健康保険に加入している方は保険料が再計算されることもあります。
複数年×複数取引所の損益計算は手間の大きい作業です。履歴の収集から申告・納付までまとめて任せたい場合は、仮想通貨の確定申告を税理士に丸投げできる?で依頼の流れを、仮想通貨の税理士に依頼するなら(対応領域・料金のご案内)で対応範囲を確認してください。
申告前に税務署から接触があるケースもあります。実務でよくあるのは、いきなりの調査ではなく、「暗号資産の取引についてのお尋ね」といった文書や電話です。これは取引所の情報などから申告漏れの可能性がある人に送られるもので、調査の通知前に自主的に整理して申告できる余地が残っている段階です。
税務調査そのものの流れ・確認されるポイントは仮想通貨の税金ガイドの税務調査セクションにまとめています。
Q. 申告を忘れていたのが複数年分あります。全部まとめて申告できますか?
A. できます。実務でも複数年分の期限後申告はよくあります。取得価額の計算が年をまたいでつながるため、いちばん古い年から順に損益計算するのがポイントです。年数が多いほど収集する履歴も増えるので、早めに着手するのが良いです。
Q. 利益が出ていたか分かりません。損失なら申告しなくてもいいですか?
A. 損益計算をして損失だったなら、所得税の確定申告義務は生じません(他に申告すべき所得がない場合)。ただし「たぶん損だった」の感覚は当てになりません。売却・交換・決済のたびに損益が発生するため、計算してみたら利益だったというケースが実務では珍しくないからです。まず計算で白黒つけてください。
Q. 古い取引所が閉鎖していて履歴が取れません。どうすればいいですか?
A. 取れる範囲の資料(銀行の入出金記録・メールの約定通知・ウォレットのオンチェーン履歴)から合理的に再構成します。完全な履歴がないことは申告しない理由にはならず、合理的な方法で計算した申告のほうが、無申告よりはるかに有利に扱われます。再構成の方法は専門家に相談する価値が大きい論点です。
Q. 期限後申告をしたら、かえって税務調査に来られませんか?
A. 逆です。自主的な期限後申告は加算税が最も軽い5%で済み、申告したことを理由に調査が来やすくなるわけではありません。危ないのは、無申告のまま放置している状態のほうです。詳しくは税務署に把握される仕組みの記事をご覧ください。
Q. 納税資金がありません。それでも申告すべきですか?
A. 申告してください。申告と納付は別の問題で、無申告のまま資金を貯めても加算税・延滞税が重くなるだけです。申告したうえで税務署に納付の相談(分割等)をするのが、負担を最小にする現実的な順序です。
仮想通貨の申告漏れ・確定申告忘れのペナルティは、無申告加算税(原則5%〜30%)+延滞税+(仮装・隠蔽があれば)重加算税40%。そして税率を決めるのは税務署より先に動いたかどうかです。気づいた今が、負担が最も軽いタイミングです。
やることは、①対象年分の確定 ②履歴収集 ③古い年から損益計算 ④申告と同時に納付——の4つ。複数年分の計算や履歴の再構成が重い場合は、専門の税理士にまとめて任せることもできます。まずは概算の分かるかんたん料金診断で、自分のケースの目安を把握するのがおすすめです。
※料金は税込表記。提供範囲は申込ページをご確認ください。
本記事は2026年7月時点の一般的な税務上の取扱いに基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。税制改正や個別のご事情により取扱いが異なる場合があります。実際の申告の判断にあたっては、最新の情報をもとに税理士へご確認ください。