結論確定(開始後の扱い)
国内の登録業者で特定暗号資産を売って出た損失は、事業所得でも、ほかの所得と損益通算できません。分離課税の枠の中だけで差し引き、残った損失は3年間繰り越します。一方、海外取引所などで売って総合課税になった事業所得の損失は、これまでどおり給与などと損益通算できます。
理由
ふだんは、事業所得で損失が出れば、給与などほかの所得と差し引けます(所得税法69条の損益通算)。
しかし、国内の登録業者で特定暗号資産を売って出た損失は、事業として取引していても、分離課税の枠の外とは差し引けません。条文で、この損失はほかの所得との関係では「生じなかったもの」とみなされるためです。差し引けるのは分離課税の枠の中(事業所得・譲渡所得・雑所得の間)だけで、残った損失は翌年以後3年間繰り越します。
総合課税になった事業所得の損失との違い
| 損失の出方 | 給与などとの損益通算 | 繰越 |
|---|---|---|
| 国内の登録業者で特定暗号資産を売った(事業所得) | できない | 特定暗号資産の利益から3年間 |
| 海外取引所などで売った(総合課税の事業所得) | できる | 青色申告なら純損失として3年間 |
注意点
- 暗号資産の取引が事業所得にあたるかは、社会通念上「事業」といえる程度かどうかで判断します。ふつうの投資では事業所得にあたらないことが多いです(所得区分の質問)
- 総合課税で、事業所得ではなく雑所得や譲渡所得になる場合の損失は、給与などと損益通算できません
根拠条文
租税特別措置法38条の2第1項(後段)(改正後・施行前)
この場合において、特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、同法その他所得税に関する法令の規定の適用については、当該損失の金額は生じなかつたものとみなす。
出典:e-Gov法令検索
分離課税の枠の損失は、事業所得でも、ほかの所得との関係では「なかったもの」になります。
租税特別措置法38条の2第2項2号(改正後・施行前)
所得税法第六十九条の規定の適用については、同条第一項中「譲渡所得の金額」とあるのは「譲渡所得の金額(事業所得の金額及び譲渡所得の金額にあつては、…特定暗号資産の同項に規定する譲渡による事業所得及び譲渡所得がないものとして計算した金額とする。)」と…
出典:e-Gov法令検索
損益通算の計算では、特定暗号資産の分離課税の事業所得はないものとして扱います。
所得税法69条1項
総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額を計算する場合において、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額があるときは、政令で定める順序により、これを他の各種所得の金額から控除する。
出典:e-Gov法令検索
総合課税の事業所得の損失は、給与などほかの所得と損益通算できます。
所得税法70条1項
確定申告書を提出する居住者のその年の前年以前三年内の各年(その年分の所得税につき青色申告書を提出している年に限る。)において生じた純損失の金額…がある場合には、…控除する。
出典:e-Gov法令検索
損益通算しきれない総合課税の事業所得の損失は、青色申告なら純損失として3年間繰り越せます。
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監修・免責事項
本ページは2026年10月26日時点の法令(所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正後の租税特別措置法・所得税法と同法附則、租税特別措置法施行令・同施行規則の改正(令和8年政令第98号・財務省令第21号)、地方税法の改正(令和8年法律第2号)、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)。いずれもe-Gov法令検索)に基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。施行日を定める政令や国税庁の解説が公表された時点で内容を見直します。個別のご事情により実際の取扱いは異なります。
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。