結論可能性あり(未確定)
分離課税の開始後は、使える可能性があります。売却が「譲渡所得」に当たる場合があり、改正後の取得費加算の特例(租税特別措置法39条)も暗号資産を対象から外していないためです。ただし国税庁の解説はまだなく、確定ではありません。2027年分までの現行制度では使えません。
理由
取得費加算の特例は、相続した財産を一定期間内に売ったとき、納めた相続税の一部を取得費に足して、売却益を小さくできる制度です。対象は「譲渡所得」の計算です。
いまは暗号資産の売却益は雑所得なので、この特例は使えません。開始後は所得税法が改正され、暗号資産の売却が「譲渡所得」になる場合があります(営利目的の継続的な売買は雑所得・事業所得のまま)。改正後の租税特別措置法39条は暗号資産を対象から外していないため、相続した暗号資産にも使える可能性があります。国税庁の解説はまだ出ていないため、確定ではありません。
使えるとすれば、条件は次のとおりです
- 相続や遺贈で取得し、相続税の課税価格に算入された暗号資産であること
- その人に相続税が課されていること
- 相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年以内(相続開始から3年10か月以内)に売ること
- 売却益が「譲渡所得」に当たること(営利目的で継続的に売買していて雑所得・事業所得になる場合は使えません)
- 確定申告書に特例を受ける旨を書き、計算明細書などを付けること
加算できるのは、納めた相続税のうち、売った暗号資産に対応する部分です。
注意点
分離課税の開始は2028年1月1日以降の取引からの見込みです。相続税の申告・納税の期限(相続開始から10か月)は待ってくれないため、売る時期は納税資金とあわせて考える必要があります。相続の税負担の全体像は仮想通貨の相続税は最大110%って本当?をご覧ください。
根拠条文
租税特別措置法39条1項(改正後・施行前)
相続又は遺贈…による財産の取得…をした個人で当該相続又は遺贈につき同法の規定による相続税額があるものが、当該相続の開始があつた日の翌日から当該相続に係る…申告書…の提出期限…の翌日以後三年を経過する日までの間に当該相続税額に係る課税価格…の計算の基礎に算入された資産の譲渡…をした場合における譲渡所得に係る所得税法第三十三条第三項の規定の適用については、同項に規定する取得費は、当該取得費に相当する金額に当該相続税額のうち当該譲渡をした資産に対応する部分として政令で定めるところにより計算した金額を加算した金額とする。
出典:e-Gov法令検索
対象は「譲渡所得」の計算です。暗号資産を除く文言はありません。
所得税法33条3項3号(改正後・施行前)
三 暗号資産の譲渡による所得
出典:e-Gov法令検索
開始後は、暗号資産の売却による所得が譲渡所得の区分の1つになります(営利目的の継続的な売買は除く)。
租税特別措置法39条2項
前項の規定は、同項の規定の適用を受けようとする年分の確定申告書又は修正申告書…に、前項の規定の適用を受けようとする旨の記載があり、かつ、同項の規定による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
出典:e-Gov法令検索
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監修・免責事項
本ページは2026年10月26日時点の法令(所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正後の租税特別措置法・所得税法と同法附則、租税特別措置法施行令・同施行規則の改正(令和8年政令第98号・財務省令第21号)、地方税法の改正(令和8年法律第2号)、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)。いずれもe-Gov法令検索)に基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。施行日を定める政令や国税庁の解説が公表された時点で内容を見直します。個別のご事情により実際の取扱いは異なります。
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。