結論確定
あります。2027年分から、基準所得金額が1億6,500万円を超える人は、超えた部分の30%から通常の所得税額を差し引いた額が、追加で課されます。分離課税の開始後は、特定暗号資産の利益も基準所得金額に入ります。特定暗号資産の利益だけの場合、約3億3,708万円を超えると追加課税が出る目安です。
理由
ミニマムタックス(租税特別措置法41条の19)は、所得が極めて高い人の税負担率が下がりすぎないようにする制度です。所得のうち分離課税の割合が大きい人ほど、税率20.315%に近づいて負担率が下がるため、一定の水準を下回らないように追加で所得税を課します。
令和8年度改正で、2027年分から基準が厳しくなりました(特別控除額が3億3,000万円から1億6,500万円に、税率が22.5%から30%に)。さらに分離課税の開始後は、特定暗号資産の利益も基準所得金額に入ります。分離課税になっても、極めて高い所得なら20.315%で終わらないことがあります。
計算してみましょう
特定暗号資産の利益が5億円で、ほかに所得がない場合(分離課税の開始後の年分)です。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 基準所得税額(所得税15%に、復興特別所得税・防衛特別所得税の2.1%分を含む) | 5億円 × 15% × 1.021 | 7,657万5,000円 |
| ミニマムタックスの基準額 | (5億円 − 1億6,500万円)× 30% | 1億50万円 |
| 追加で課される所得税 | 1億50万円 − 7,657万5,000円 | 2,392万5,000円 |
通常の所得税7,500万円に、2,392万5,000円が上乗せされます。上乗せ分にも復興特別所得税・防衛特別所得税がかかり、住民税5%(2,500万円)を加えた合計は約1億2,600万円、負担率は約25.2%です(端数処理前の概算)。
特定暗号資産の利益だけの場合、追加課税が出るのは「(利益 − 1億6,500万円)× 30%」が「利益 × 15.315%」を超えるとき、つまり利益が約3億3,708万円を超えるときです。差し引く「基準所得税額」には、復興特別所得税・防衛特別所得税も含まれるためです。給与や株式の利益などほかの所得があると、基準所得金額が積み上がるため、もっと少ない利益でも当たることがあります。
注意点
- 判定は1年ごとです。大きな利益を確定させる年を分けると、各年の基準所得金額を抑えられます
- ミニマムタックスは所得税の追加課税で、住民税には同じ仕組みはありません
- 2026年分・2027年分の暗号資産の利益は総合課税(分離課税は2028年1月1日以降の取引からの見込み)で、総合課税の所得も基準所得金額に入ります
根拠条文
租税特別措置法41条の19第1項(令和8年法律第12号による改正後(2027年分以後に適用))
個人でその者のその年分の基準所得金額が一億六千五百万円を超えるもの…については、当該超える部分の金額の百分の三十に相当する金額からその年分の基準所得税額を控除した金額に相当する所得税を課する。
出典:e-Gov法令検索
租税特別措置法41条の19第2項9号(改正後・施行前(分離課税の開始と同時))
九 第三十八条の二第一項に規定する特定暗号資産に係る譲渡所得等の金額
出典:e-Gov法令検索
分離課税の開始後は、特定暗号資産の利益も基準所得金額に入ります。
所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)附則47条
新租税特別措置法第四十一条の十九第一項の規定は、令和九年分以後の所得税について適用し、令和八年分以前の所得税については、なお従前の例による。
出典:e-Gov法令検索
1億6,500万円・30%の基準は2027年分(令和9年分)から適用されます。
我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法5条の31第1項(読替え)(令和8年法律第12号による改正後)
租税特別措置法第四十一条の十九第三項 …所得税の額 所得税並びに当該所得税に係る防衛特別所得税及び復興特別所得税の額
出典:e-Gov法令検索
ミニマムタックスで差し引く「基準所得税額」は、所得税に復興特別所得税・防衛特別所得税を加えた額として計算します。
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監修・免責事項
本ページは2026年10月26日時点の法令(所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正後の租税特別措置法・所得税法と同法附則、租税特別措置法施行令・同施行規則の改正(令和8年政令第98号・財務省令第21号)、地方税法の改正(令和8年法律第2号)、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)。いずれもe-Gov法令検索)に基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。施行日を定める政令や国税庁の解説が公表された時点で内容を見直します。個別のご事情により実際の取扱いは異なります。
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。