結論確定(判断の目安は通達待ち)
営利目的で継続的に売買している場合は雑所得、その売買が社会通念上「事業」といえる程度なら事業所得、そうでない投資としての売却は譲渡所得になります。分離課税の枠では3つをまとめて20.315%で課税し、損失も区分をまたいで差し引けます。購入代金(取得価額)と売るための手数料は、どの区分でも差し引けます。ただし、それ以外の経費(取引のための管理費など)を差し引けるかどうかが区分で違うため、税額が変わることがあります。一方、海外取引所などで売って総合課税になる場合は、区分によって損失の扱いなどが変わります。
理由
開始後は、暗号資産の売却による所得が「譲渡所得」になり得るようになります(所得税法33条3項3号)。ただし、営利目的で継続的に行う売却は譲渡所得から除かれる(同条2項1号)ため、次のように分かれます。
| 売却のしかた | 所得区分 |
|---|---|
| 投資として持っていたコインを売る(営利目的の継続的な売買ではない) | 譲渡所得 |
| 営利目的で継続的に売買している | 雑所得 |
| 営利目的の継続的な売買が、社会通念上「事業」といえる程度に至っている | 事業所得 |
事業所得になるかどうかの判断
国税庁の通達は、事業所得になるかどうかを「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうか」で判定するとしています(所得税基本通達35-2の注)。
何が「社会通念上の事業」かについて、最高裁判所は、事業所得を「自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」と述べています(昭和56年4月24日判決)。暗号資産の売買でいえば、次のような点を総合して判断することになります。
- 自分の資金と責任で、独立して売買しているか
- 利益を得る目的で、反復・継続して売買しているか
- 売買にかける時間・資金・体制(専用の設備、従業員など)が、事業と呼べる程度か
- 売買の収入で生計を立てているなど、社会的にも事業と認められる状況か
これらを満たし、社会通念上「事業」といえる程度に至っていれば、事業所得として申告できます。満たさなければ雑所得です。なお、取引を記録した帳簿書類を保存していない場合は、原則として事業所得になりません(同通達の注)。
どこからが「営利目的の継続的な売買」にあたるかの目安は、まだ国税庁から示されていません。株式の売買では保有期間などで目安を示した通達があり、暗号資産にも同じような目安が示される可能性があります。
区分によって何が変わるか
| 売った場所 | 区分による違い |
|---|---|
| 国内の登録業者(分離課税) | 税率(20.315%)と、損失を区分をまたいで差し引ける点は共通。購入代金(取得価額)と売るための手数料も、どの区分でも差し引ける。違うのはそれ以外の経費で、事業所得・雑所得は取引のための管理費なども必要経費にできるが、譲渡所得は取得費と譲渡費用(売るための費用)に限られる |
| 海外取引所・DEXなど(総合課税) | 譲渡所得:損失はほかの所得と通算不可・50万円控除や2分の1課税もなし 雑所得:損失はほかの雑所得とだけ差し引ける 事業所得:損失は給与などと損益通算でき、青色申告なら繰り越せる |
注意点
- 取得価額の計算方法(原則、総平均法。届出を出せば移動平均法)は、どの区分でも同じです(取得価額の質問)
- 2027年分までの現行制度では、暗号資産の売却益は原則として雑所得です
根拠条文
所得税法33条2項1号・3項3号(3項は改正後・施行前)
次に掲げる所得は、譲渡所得に含まれないものとする。一 たな卸資産(これに準ずる資産として政令で定めるものを含む。)の譲渡その他営利を目的として継続的に行なわれる資産の譲渡による所得 / 三 暗号資産の譲渡による所得
出典:e-Gov法令検索
暗号資産の売却は譲渡所得になり得ますが、営利目的で継続的に行う売却は譲渡所得から除かれます。
所得税法35条1項
雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
出典:e-Gov法令検索
租税特別措置法施行令25条の15の2第1項(改正後・施行前)
…その年中の同項に規定する特定暗号資産の譲渡…に係る事業所得の金額、譲渡所得の金額及び雑所得の金額の合計額とする。この場合において、これらの金額の計算上生じた損失の金額があるときは、当該損失の金額は、…控除する。
出典:e-Gov法令検索
分離課税の枠では、3つの所得区分をまとめて計算し、損失も区分をまたいで差し引きます。
租税特別措置法施行規則18条の17第1項(改正後・施行前)
一 事業所得又は雑所得 次に掲げる項目 イ 総収入金額については、特定暗号資産…の譲渡…による収入金額 ロ 必要経費については、特定暗号資産の取得価額、特定暗号資産の譲渡のために要した委託手数料、管理費及びその他の経費の別 二 譲渡所得 次に掲げる項目 イ 総収入金額については、特定暗号資産の譲渡による収入金額 ロ 取得費及び譲渡に要した費用については、特定暗号資産の取得費、特定暗号資産の譲渡のために要した委託手数料及びその他の経費の別
出典:e-Gov法令検索
どの区分でも、取得価額(譲渡所得では取得費)と委託手数料を差し引きます。事業所得・雑所得では、これに加えて管理費などの経費も必要経費になります。
所得税基本通達35-2(注)
事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する。
出典:国税庁
事業所得か雑所得かは、社会通念上「事業」といえる程度かどうかで判定します。
最高裁判所第二小法廷 昭和56年4月24日判決(民集35巻3号672頁)
事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいう
社会通念上の「事業」にあたるかは、この判決が示した要素(独立性・営利性・有償性・反復継続・社会的地位)をもとに判断されます。
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監修・免責事項
本ページは2026年10月26日時点の法令(所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)による改正後の租税特別措置法・所得税法と同法附則、租税特別措置法施行令・同施行規則の改正(令和8年政令第98号・財務省令第21号)、地方税法の改正(令和8年法律第2号)、金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)。いずれもe-Gov法令検索)に基づき、村上裕一公認会計士事務所が監修しています。施行日を定める政令や国税庁の解説が公表された時点で内容を見直します。個別のご事情により実際の取扱いは異なります。
この記事の執筆・監修者
公認会計士・税理士/村上裕一公認会計士事務所 代表村上 裕一
大手監査法人での監査実務、事業会社の経理財務、税理士法人の勤務を経た後、村上裕一公認会計士事務所を立ち上げる。仮想通貨の税金を専門とする税理士として、仮想通貨の様々な税金のご相談や顧問を手掛け、多くのお客様の仮想通貨の税金のお悩みを解決しています。